「あっちゃん無事――ぎゃッ!!」


 取り敢えずキサは、上半身裸の男たちを殴った。


「お前らの裸なんか見ても嬉しくないんじゃあー!! もっと大人になってから出直して来いやー!」

「「「「(そんなこと言われても……)」」」」

「取り敢えず今は入って来んな!」


 キサに閉め出されたみんなは、寒空の下露天風呂の中に取り残されることに。


「(あっちゃん……)」


 そっと、静かに眠る肌の白い葵に手を添える。


「(蕾のまま枯れるって。こういうこと……?)」


 心配になったけど、取り敢えず葵の濡れてしまった服を脱がせ、カナデから奪い取った浴衣を急いで着させてやる。
 下着も、何故か知らないけどサイズピッタリなものをカナデが持って来ていて引いた。首元は、さっきたくさん塗りたくってたからそんなには取れてなかったけど、それも隠してあげた。


「……あいつ、大丈夫?」


 丁度タイミングがよかったみたいで、まだキサとオレしか脱衣所にいなかった。


「あんた、あっちゃん裸だったらどうするのよ」

「? ラッキーって思う」

「最低だな」

「お褒めの言葉ありがとう」

「褒めてねえよ」


 キサの話を横に聞きながら、あいつのほっぺたを触る。


「……まだ、もうちょっと冷たいか」

「日向……」

「大丈夫だよキサ。前も倒れたけど、すぐに治ったから」

「前も、って……」

「……取り敢えず大丈夫。オレが言うんだから間違いない」

「どっから出るんだその自信。あっちゃんのこと見つけらんなかったくせに」

「それはそれ、これはこれ」

「はいはい……」


 オレは、そっと背中と膝裏に手を差し込んで持ち上げる。


「布団別のところに敷いたんだ。オレらと一緒だったら休まらないと思って」

「うん。それでいいと思う」

「先に連れて行くね」

「うん。……お願いね」


 そう言って脱衣所を出て、オレは廊下を歩いて行った。



「……もう入っていいよ」


 キサがそう声を掛けたら、アキラとツバサとアカネが、難しそうな顔をしていた。


「え。……どうしたの?」

「いいや。なんでもない」

「気にしないで」

「うん。何でもないよおきさチャン」


 そう言ってる顔は、やっぱり暗くて。そのあと入ってきたカナデ、チカゼ、オウリも、困惑したような顔をしていた。


「あれ? ていうかアオイちゃんは?」

「ああ、それなら日向が連れて行ってくれた」


 そう答えると、カナデとアカネは大急ぎで脱衣所から出て行き、他のメンバーも超特急で着替えて飛び出していった。


「いや、どこの部屋かわからんでしょうに……」


 葵のことになると周りが何も見えなくなってしまう幼馴染みたちに、呆れを通り越して尊敬するキサだった。