そんな会話をみんなのいないところでしたあと、二人がいないことに気がつく。どうせ二人で一緒だから、ツバサに任せておこうって話になって。取り敢えずホテルで待っていようってことになったけど……。


「ぜ、全然帰ってこないねー。どうしたのかな。アオイちゃん……」


 時間になっても一向に帰ってくる気配がない。


「も、もしかしてあっちゃん。そのまま翼と……」


 そういえば、そんなホテルもここにはいっぱいあったような……。
 キサがそんなことを言ったせいで、みんなは一斉に二人へと連絡を取った。


「……くっそ。俺の葵が……」

「アキくん、そう言っとけばいいって思ってるでしょ」

「え。俺のだし」

「(いや違うだろうよ。ぶっ飛ばすぞ)」

「ひ、日向の目が怖い……」

「アオイちゃんの純潔がオカマなんかに奪われてたまるかー!」

「奪おうとしてたのはどこのどいつだよ」

「俺ダネ! (てへ?)」

「(一遍女に刺されてしまえばいいと思う)」

「な、なんだろう……。言いたいことがひしひしと伝わってくる……」

「あおいチャンがつばさクンに犯されるよお……!」

「つっくん絶対経験者だから、あれよあれよと……」

「(鼻血)」

「うわ。チカが変な妄想してんだけど」

「うわ! ちかクンキモい! はいティッシュ」

「うっわ! ちーちゃんきもーい! 鼻に突っ込んであげるよ」

「詰めすぎだって! 鼻の穴デカくなったらどうするんだよ!」

「よかったじゃん。一回で息がいっぱい吸えるよ」

「その代わり花粉もいっぱい吸い込みそうだけどね」


 とまあ電話をしながらそんな会話をしてたらやっと帰ってきたから、みんなでお説教をしてたけど。……殆どは、オレに言い返せなかった八つ当たりだと思う。


「ツバサと、なんかあったの?」


 そのあと外食をしようということになって、外でご飯を食べてた時に、ちょっとだけ聞いてみることにした。
 言いたくないなら言わなくていい。言えないなら言えないって言えばいいって言ったから、それはハッキリ教えてくれはするだろう。


「ん? んー……」

「……言えないならいいよ。無理には聞かない」

「え? うん。ありがとう。なんて言ったらいいかなって、今考えてて」

「……教えてくれるの?」

「全部は教えてあげられないんだけど」

「……じゃあ、ちょっと。教えて?」

「そうだね。えっと、バンジージャンプのお手伝い? かな」

「は?」

「そんな顔しないでよ! めちゃくちゃ合ってるよねツバサくん!」

「え? 何よ」

「遅くなってた原因はさ、いつでもバンジーの手伝いをしてあげるねって話してたからだよね?」

「え? ……ええ、間違っちゃいないわ」

「(意味わかんない……)」


 オレと同様みんなも首を傾げてたけど、二人はどこか楽しげに笑ってた。


「(……ま、笑えてるんならいいけど)」


 それから今日は、最終日の明日に向けて早く寝ようということになって、それぞれ部屋に帰って寝た。

 ――ダダダダダダダダダダダダダダダッ!!
 しかし夜の11時頃、廊下から何匹もの獣が走るような足音が聞こえた。


「……ちょ。なに……?」


 アオイから電話が掛かってくるまで寝ようとしてたオレは、ガチャリと扉を開けた。すると、ドンドンと、あいつの部屋の扉を叩く獣たちの姿があったけど……。


「……無理。寝る」


 好奇心より睡魔が勝った。珍しいこともあるもんだけど、なんか別に放っておいても大丈夫かと思って。なんだかんだで2年組は、あいつが好きだけどそこまで手を出さないし。


「……一番危ないのはオウリだと思うけどね。次はチカ。あいつら調子に乗ってるから。いつかぶっ飛ばす……」


 アオイから連絡があるまで、結構この旅行は疲れることが多かったので、ここでしっかり寝ておこうと思った。
 ……でもその夜、アオイから連絡は来なかった。


「どうしたんだろう」


 数時間前、アキくんたちがあいつの部屋に行ってたのと何か関係が……。


「……そういえば、そこにツバサはいなかった」


 え。まさか、ね。まさかまさか~。はははー……。


「……ツバサぶっ飛ばす」


 流石に確証もないのに乗り込むことなんてできないけど、もしやってたりなんかしたら……。


「(おめでとうツバサ。きっとハルナに会えるんじゃないかなー?)」


 今日はアオイから連絡はないんだと思って、時間ギリギリまで寝ることにした。