みんなが来たけど、あんまりヤーヤー言われなかった。ちらりとキサを見たらなんかニヤニヤしてたし、なんかみんな疲れてたから、あいつが余計なことしたんだろう。バスに乗ったらみんな爆睡してた。
「(……最初で最後だな。ほんと)」
だから、ずっと心に留めておこう。……体に、残しておこう。ずっと。
あいつと握った右手を、ぎゅっと握り締めて。指の間から伝わってきた熱を。……ずっと。閉じ込めておこう。
「じゃあ、先に上がるねー」
「うんっ」
その日はキサとお風呂に入って話をした。
「(ぶくぶくぶく…………)」
もう十分温まっていたけれど、汗をかいたから、もう一度洗い流すためにお風呂に残った。
「(ぶくぶくぶく…………)」
ちらりと、自分の服の上に置いているブレスレットを見て。
「(ぶくぶくぶく…………)」
未だに熱い手を……。
「……ぷはっ! ……なんで。あんなこと、言っちゃったんだろう」
指と指の間の熱を……。
「……どう。しちゃったんだ。ろう……。っ……」
胸の前で、大事に抱え。
「……。なんで。こんなに。……っ」
逸る鼓動を。……押さえていた。



