みんなの元に帰ったらなんか知らないけど、いつの間にかアキくんがあいつに告ってたらしい。しかもなんかキスまでしてるし。


「(だから。攻撃力ばっかりあげるんじゃなくて防御力も上げてって……)」


 でも、オレにどうこう言えることなんてできないから、何も言わずに……。


「ねえ。なんでキスしたの」

「え? ひ、……ヒナタくん??」

「みんな気になってるからさっさと答えたら?」


 レストランでご飯を食べてる最中に、尋問が繰り広げられ……。


「わ、わたし。されたんだけど……」

「だからどうしてされたのかって聞いてんの」

「せ。選択肢に。なかったからって……」

「は? 選択肢って何。どういうこと。ねえ」

「いや。あの。それは……」

「……はあ」


 いつもと違うどもり方。本当に困ってる。言いたくないって顔だ。


「……言いたくないんなら、そういえば言い」

「え?」

「言えないんだったら、素直にそう言ってよ」

「……ひなた、くん……?」


 だって、アキくんの返事は保留って言ってた。
 ……さっきはなんかあったんだろうなって。返事も。なんかあるんだろうなって。そう、わかるじゃん。普通に考えて。


「……うーんと。選択肢って言うのは、荒療治のことで……」

「は?」


 どういうことかと思ったら、アキくんがこのまま自分のことをそんな感じに見るのが嫌だったから、ちょっと強引にアキくんの要望にほぼ叶える形でそんな選択肢にしたらしいけど。


「はあああー……バカでしょ」

「え? な、なんで?」

「アオイちゃん、バカだ」

「あんた、それはないわ」

「あおいチャン。……頭治そ?」

「あーちゃん。おれが一緒に病院付いていってあげるから」

「にしても、なんであんなことになったんだよ」

「葵。お前は何も悪くない。お前は俺のためによくやってくれたんだ。ありがとう」

「え。あ、アキラくん……? な、なんか距離が近い気が……」

「あっちゃん? よく考えてみて?」

「あ。キサ先生……!」

「まあ悪い気はしない~。……それはさておいて。あっちゃん? あのね、そう言ってからアキラにどんな顔をしたの?」

「え? ただ目を瞑ってしやすいように上向いたけど?」

「それが、キスを待ってるように見えると思うんだけど?」

「え……」

「そうそう。だからアキくん、昨日のこともあって理性崩壊中だったから、そんな顔で待ってられたら」

「あっちゃんは『ぱっくり食べちゃってください!』って言ってるようなものだったってこと!」

「えええぇー……!?」

「いいんだ葵。俺にだけは、それでいてくれたら」

「いやいや! それでアキラくんの前に言ったら絶対理性崩壊中じゃなくてもわたしぱっくりいかれちゃうよ!?」

「取り敢えずは、ここにいる男共に対してそんな顔はしちゃダメだよってことー」

「そ、そうだったのか……」

「いや葵、俺にはそれでいい」

「あきクンストップ!」

「あっくん暴走しすぎ!」

「しょうがない。かわいい葵が悪い」

「……!? かわ……!?」

「まあ俺だって、そんな顔で待たれたら、キスだけで終わらないよねー?」

「はあ!? か、カナ!! おまっ。……最低だぞ!」

「あっれ~? 何を想像したのかな~チカちゃん?」

「……!? う、うるせー……!」

「まあ、ここの男たちだけじゃなくて、他の誰にもしないことだわ」

「ま、まあ、今回は変な選択肢を提案したわたしが悪いとして」

「いや悪いんだって。防御力上げてよ」

「ん?」

「はあああー……」

「??」

「ちょっと日向。割り込んでこないでよ」

「ツバサが言いたいのは、あんたも女なんだから気をつけなよってこと。そういうことに関して」

「そういうこと……」

「そう。じゃないとアタシたち、いっつもヒヤヒヤして休めないわ」

「ご、ごめんね……?」

「謝るんだったら、ちゃんとそういうことをするのはやめること。わかった?」

「はーい」

「ま、俺にはして欲しいけどな」

「え。お、男モード……」

「キスして欲しかったらいつでもそれで来いよ?」

「行かないよ! もうしないから!」


 あおいがそう言うと、みんな安心したような。でもどこか残念がってた。


「よしヒナタくん! いっくぞー!」

「はいはい」


 次にいろんな体験ができるところへ行ったんだけど、それぞれ作りたいものを選んだら。


「(……一緒)」


 またそんなことで、とくんと胸が鳴った。
 でもまあ、あいつははしゃぎまくって、変なTシャツを作ってたけど。


「うっし! こんなもんかな?」

「え。あんた、ほんとにそれでいいの?」

「うん! 今のわたしには、これ以外の言葉が浮かんでこない!」

「沖縄要素全然ないじゃん。せめてゴーヤチャンプルぐらいにしとけばよかったのに」

「はっ!」

「おっそ」

「これは自分で着るから、ゴーヤはシントにあげる!」

「え。もう一枚作るの? (シントさんごめん。絶対余計なこと言ったわ)」


 でも、そう言ってまた楽しそうに、にこにこ笑いながら一生懸命作り出す。


「(ははっ。ほんと、何がそこまで楽しいんだか)」


 自分のTシャツは至ってシンプル。ていうか、見本のままだけど。


「(Tシャツ、ばっかり……)」


 そう思ったら、なんだかまたいじわるしたくなった。