すべてはあの花のために❾

　そう言うってことは、答えのようなものだ。


「わたしは、……ずっと前から、アキラが気になってた。だから、久し振りに会えたのが嬉しくて、大暴走しちゃったというか。欲求が爆発しちゃったのかも。だから、あんなことしちゃったのかも……」

「…………」

「だから言ったの。暴走したら止めてねって。だから、ありがとうって言ったの。暴走を止めてくれたから」

「…………」

「黙っててごめんなさい。でもこういうことって、やっぱり言いたくなんてなかったんだ。だって、これは紛い物だから。だってわたしは、葵じゃないんだから。こんなことしたって。……葵のために、ならないんだから」

「…………」

「だって。……ヒナタがわたしを、消してくれるんだから」

「……ッ！　アオイ！」

「いいんだ。これが、わたしの幸せだから」

「…………っ」

「こんな気持ちをまた持てたことが奇跡に近いし、……初めからわたし自身は、アキラと結ばれるつもりなんてないし」

「アオイ……」

「ただ……想えるだけで、十分なんだ。わたしは、……また。想えただけで、十分だ」


　本当に、自分を見ているようだった。
　想えるだけで……。たとえあおいの隣に立てなくたって。見られるだけで十分なオレと。まるで……。


「いや～。欲望修行で落としきれなかったよ～」

「そうみたいだね」

「いやいや～。ほんとさ、なんであんなことしちゃったんだろうね？」

「……しょうがないじゃん」

「ほんと。……なんで、あんなこと……」

「……アオイ」


　ぽとり。アオイの目から涙が出る。


「……なんで。しちゃったんだろう。あんなこと。しちゃったら。もう……」

「…………」

「……ううん。なんでもない。わたしは。……生きてるべきじゃ。なかったんだから」

「アオイ」

「わたしはね。葵が。一番なんだ」

「……うん。知ってる」

「葵がいたから。わたしは。生きられたんだ」

「うん。そう、だね」

「あんな。つらいことがあったからわたしはっ。……っ」

「アオイ……」

「こんなわたしは。……いるべきじゃないから」

「でも、アオイがいたから助かったんだ。命を助けてあげたのは、他でもないアオイだよ」

「あおいを奪うのも、わたしだよ」

「たとえそうだとしても、あの時アオイが助けてくれなかったら、オレは出会えなかった」

「ヒナタ……」

「別に、アオイの気持ちを押し殺す必要は無いと思う」

「え……？」

「そのままの意味だよ」

「で、でも……」

「でもごめんけど、オレはアオイのことは消してしまうから……」

「ううん。それでいいんだ。いいんだよ」

「だから、今だけは。……アオイがアオイでいられる時間は、アオイができる範囲で自由になればいい」

「ひなた……」

「あいつを助ける時は、ごめんけど手を借りるよ」


　そう言うとアオイは、またぼろぼろと涙を流し出した。
　その涙をオレは、拭ってやることなんてできないから……。ただずっと。泣き止むまで。そばにいてあげた。