「すみません。あの、アルバムとか写真のデータ、見せてもらいたいんですけど」
それからどんどん母さんは壊れていった。ハルナとオレの区別はついてるみたいで、写真とかを見ても、オレを見た途端に暴れ出した。
だったら、とことんこの世界から、オレのことを消してやろう。そう思って。
「(後ろ姿は…………まあいいか)」
流石にそこまでやってたらキリがない。ま、オレ自身写真苦手だったし、そこまで枚数はなかったけど。
「どうしたんだいきなり」
飴を咥えながらそんなことを言ってくるアキくんの方こそ、どうしたんだって言いたいけどね。
「ちょっと今さ、母さん精神的にきてて」
「え」
「オレの写真とか見ると、暴れるんだよね。まあオレがハルナ殺したようなもんだし」
「それは違う」
そう言ってくれるけど。
……いいんだ。これでオレは、罪の意識から少し解放されるんだから。こんなオレが、誰かを幸せになんて。できるはずないんだから。
「(だからオレは、みんなが幸せになれるなら、なんだってする)」
犠牲? そんなもんじゃない。オレは、それを好きでやってるんだから。
「今さ、母さんオレのこと、ハルナって呼ぶんだ」
「え」
「なんとかするよそれは。でも情緒不安定だし、それならとことん取り敢えずはそんなふうにならないようにしてあげたいんだ」
「……それは……」
「やり方間違ってるかもしれないけどね。でもこれはオレらの問題だから、どうにかしようなんて思わないでね」
「日向……」
そんなことしたら、……また罪悪感に囚われる。
これでいい。責められてないと、また苦しいんだから。
「……あ。アルバムは流石に処分したら不味いから、念のために奥の方に隠しておいてね」
「なんでそこまで……」
「なんでか? そんなの、母さんのために決まってるじゃん」
オレが本当は双子だったなんて、誰にも言わなくていい。オレが、母さんにその双子の姉だって思われてるなんて言わなくていい。この世から、オレの存在を消していくことなんて止めなくていい。
それでいい。罪人のオレには、それぐらいでも足りないくらいだ。
「俺らはちゃんと呼ぶ。お前の名前を」
「アキくん……」
そうは言っても、オレの大切な仲間だ。いるだけで安心できる。
「だから、……抱え込むな日向。俺らがいるんだから」
「……うん。何かあったら言うよ。ありがとう」
――でも、絶対に言えなかった。言えるはずもなかった。
「え。……か、かあ、さん……?」
……何これ。何この道具。なに、この白い粉は……。
「……っ、これはだめだ! かあさん!」
「うるさい! ほっといてよ! それとも殺されたいの?!」
説得なんかできなかった。警察になんて、連れて行けなかった。
「……また。オレのせいで……」
罪悪感が、また心を支配する。
またオレは。……一人になる。
苦しかった。よっぽど、そっちの方が。だったら一緒に、罪を背負っていく方がいい。
それでオレは。この苦しみから解放されるんだから。



