それからオレは、たまたまを装って、襲われている先生を助けに入ったのだけれど。
「……っ~~……」
「先生……!」
先生は、かなりの重傷を負ってしまった。
「……だい。じょ。……ぶよ。……くじょ、……くん……」
「今、救急車呼びましたからっ。もうちょっと頑張って……!」
先生は丸腰だった。向こうは、バットやら何やらを使ってきたみたいで、袋叩き状態。
「……かな。らず。れんらく。いれる、から……」
「先生……!」
先生は意識不明の重体。救急車が到着した頃には、たくさんの血が流れていた。
「……わけあり、だからって……」
これが、本当に正しい方法かなんて。そんなのわからないじゃないか。
それから、先生から連絡は一向に入ってくることはなかった。現れた警官……いや、公安の人たちに犯人を引き渡したけど。
「(……カナ……)」
先生のことがあって、カナは人と距離を置き、常に警戒するようになってしまった。
「(……これで、よかったのかな。本当に)」
もっと、違う方法はなかったのか。今でもよく思う。
「(でも、ほんとのことを今のカナに言ったって、組の人たちに言ったって、また同じことを繰り返すに決まってる……)」
『圭撫くんが、いつか救われた時』
理事長はそんなことを言っていた。まだ、その時ではないんだろう。
「(はあ。……また、冬が来るよ。ハナ)」
この事件は、先生の重症と引き替えに犯人も捕まって幕を閉じた。



