そう言ってくる先生の目が、必死に訴えかけてきていた。
「……まあ、オレは初めから捕まえたかったのでいいですよ」
「そう、それはよかった」
「……もう、誰も傷ついて欲しくないんで」
「九条くん……」
もう。みんなが傷つくのは。……見たく、ないんだ。
「……それで? どうしたらいいんですか?」
「相手は私も知っているの」
「え。それなら、公安がさっさと捕まえたらいいじゃないですか」
「そうしたいのは山々なのだけれど、……ちょっとわけありなの」
「はあ……」
「それで、警察……いえ。公安へ引き渡すのを、君にお願いしたいの」
「え? ……せ、先生は?」
「私は囮になるわ」
「それは危険です……!」
「大丈夫。私強いし?」
「いやいや。それでも女性なのに、大の男たちを……」
「君には知っておいてもらった方がいいだろうと思って言うけど」
「……?」
「……私ね? もうその裏切り者たちに目をつけられてるのよ」
「ええ……!?」
「まあ、それはいいんだけど」
「よくないでしょ……!?」
「まあ、最近は仕事帰りとか待ち伏せされてラブホに連れ込まれて体が持たないわ」
「せ、先生……!」
「ああ、そういうことは全然してないわよ? 連れ込んだと同時に私がボッコボコにしてるもの」
「え……」
「だから、多分そろそろ、みんなで寄って集って私に攻撃してきそうなのよね」
「え……!?」
「圭撫くんも、どうやらラブホに連れ込まれてるっていうのを知ったみたいで。最近また来なくなっちゃったのはそのせいね……」
「それが原因……」
「お家の方も、多分裏切り者のせいで私を悪者だと思ってる。美作さんと一緒ね」
「だったら、その裏切り者を早く捕まえて」
「わけありって言ったでしょ? 囮になるって。……ある程度、私に攻撃したのを見届けてから、助けて欲しいの」
「え」
「私は攻撃しない。君たち強いみたいだし、前みたいにボッコボコにしてくれたあと、公安が駆けつけるように手配しておくから」
「い、いや。先生がやったら……ダメなんでしたね、ハイ」
「そうなの。……申し訳ないけど、頼めるかしら」
「……みんなには今の話は言わず、たまたまを装えばいいんですね」
「ええ。この件が終わったら、あなたに聞きたいことがあるのだけれど……しばらくは難しくなるかもしれないわ」
「え?」
「ある程度と言っても、恐らくは殺す勢いで来ると思うから、結構な大怪我をすると思う」
「……!? だ、だったらそうなる前に助けます!」
「いいえ? 死なない程度、生活に支障がない程度が一番ベストな条件なの」
「……それも、わけあり?」
「まあ受け身も取るし、急所は外して受けるから安心して? 元気になったら、こちらから連絡は入れるから」
「……わかり、ました。けど……」
「……? 何か質問?」
「この件が終わったら、わけありのことも聞かせてくださいね」
「ははっ。……ええ。そのつもりよ」



