すべてはあの花のために❽

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「よかったわー。信用してくれたみたいで?」

「(じ~……)」

「し、信用してくれたみたいで……?」

「(じ~……)」

「え。信用してくれたから電話してくれたんじゃないの? なんでそんな疑いの目で見られてるのよ私……」


 あのあとすぐにオレは先生に追いついて、先生の家でお茶をしている。


「ちょっとは信用しました。個人情報渡してくれたし」

「そ、そう……」

「……カナを、助けてやってください」

「九条くん……」

「カナを助けてやれたら。……先生のこと、ちゃんと信じます」

「……そっか。それはよかったわ」

「……理事長が言ってたんですけど」

「ん?」

「……命を落とすくらい、危険なことなんですか」

「まあ、現に美作さんは危なかったもの」

「確かに、それはそうですけど……」


 でも、あの理事長の忠告は尋常じゃなかった。身に覚えがあり過ぎて、鳥肌が止まらなかった。


「圭撫くんを助けられたら、信用してくれるのよね?」

「え? ……はい。そうですね」

「……私は、自分の勘を信じてるから……」

「え?」

「あなたを信じてるわ。きっと、導いてくれるって」

「は、はあ……」


 よくわからないことを言われたけど、そのあと先生はカナをなんとか説得してくれて、無事に登校するようになった。

 ……でも、また登校しなくなってしまった。


「は? え?」

「だから、私はわけあって教師をしてるけど、本当は警察の人間。公安って言ってわかるかしら。そこの所属なの」

「えー。……え?」

「初めは母がこの仕事をしていたんだけれど、対象者と一緒に事故に巻き込まれてから、仕事が続けられなくなったの」

「(なんでこんな話。オレまだ小6ですけど……)」

「しばらくその任務に就けるものがいなくて、一応は監視という形で見てはいたの。それで、私が母の仕事をそれから引き継いで、今こういうことをしてるわけ」

「……よくわかりませんけど。公安は味方だと思っていいんですか」

「ええ。あなたが、公安の私を味方だと思ってくれるなら」


 もう、事が大きすぎて頭に入ってこない。


「そ、そもそも、公安ってそんな公言していいところじゃないはず。すごい危ない事件を担当するところでしょ?」

「そうね。でも、どうしてあなたには公言してしまったか。……それは、あなたの手を借りたいから」

「え? ……オレの?」

「そう。……裏切り者を知っている、君にね」

「――!!」

「……もう、あの子に罪は背負わせたくないのよ」

「は? ……どういうことですか」

「いいえ、こちらの話。……この件の裏切り者を、君は知っているわね? 美作さんから聞いて」

「……だったらなんですか」

「いえ、それは別にいいの。ただ、もうここで止めないといけない」

「は? ちょ、意味がわからないんですけど……」

「その裏切り者を捕まえる手伝いを、してもらいたいの」

「はい!? それは……」

「美作さんのことを言ってるんだと思うけれど、……申し訳ないけど、このまま放って置くわけにもいかないのよ」

「……この事件が、危ないからですか」

「この事件を放置していたら、もっと危ないことになりかねないからよ」