「――アキくん、あいつらだ」
ユズからそいつらの特徴を聞いて、アキくんとチカ、それからツバサとアカネとオウリを連れて、その犯人をとっちめるために人気のない路地裏で待機をしていた。(※キサはお留守番)
「……にしても、何でヒナタはあいつらが犯人だってわかったんだよ」
「は? オレにできないことがあると思ってんの?」
ユズとは内緒にするって言っていたので、みんなにも情報源は伏せてそんなことを言ってやった。
「すごいな日向。それじゃあご褒美にこの飴あげる」
「……いや。アキくん。いいから……」
ぶっ飛ばすのはアキくんとチカに任せて、あとのみんなで誰もここに来ないように路地の入り口に立って見張っておく。
「それじゃあ二人とも! がんばってね!」
「(こくこく!)」
「何かあったら叫ぶのよ? わかったわね?」
それから、ちょっとぼろぼろのチカと無傷のアキくんが、しばらくしたら帰ってきた。
「日向の言う通り、あいつらがやったみたいだ」
「すっげーな! 何でわかったんだよ!」
「まああの手この手でね。使えるもんは使わないと」
どうやら、みんなは彼らが組の奴らだってことは知らなかったみたいだ。まあオレも知らなかったし。あそこ、人数多いしね。
ここでちゃんと、お縄につけておけばよかったなんて。その時はまだ、オレの考えは浅かったんだ。
『……どうしたの? ひなくん』
「あ、ユズ。今大丈夫?」
『うん、いいよ? なんかあった?』
「……犯人さ、とっちめといたよ」
『え……!?』
「ユズが捕まえなくていいって言ったから、そこまではしなかったけど……」
『え? え……??』
「チカとアキくんがボコってくれたから。多分あいつらももうしないと思うよ」
『……そ、か』
「……なんで、捕まえるななんて言ったの。犯罪だよ? ユズだって嫌だったでしょ?」
『……かなくんが、知っちゃったら……』
「そのことだけど、それだとユズのこと、ずっとカナ勘違いしたままだよ?」
『え……?』
「自分のことを嫌ったんだって。だから別れたんだって。ずっとそう思うよ?」
『…………』
「それじゃあダメでしょ。ユズだって嫌でしょ? カナ好きでしょ?」
『…………。うんっ』
「組の奴がやったって言うのは、まだ言わないでおくからさ。あいつの中のユズだけでもさ、変えてあげようよ。ね?」
『ひなくん……』
「きっと飛んでいくよ。ユズのとこ」
『……。なんて。言ったらいいか……』
「正直に言ったらいいんじゃない? 嘘なんて無しに。隠し事も」
『……。うん。言って欲しい。ひなくん』
「え? オレが言うの?」
『誰でもいいけど。……でも、かなくんをあたしが体を張って守ってやったんだって。それくらいは、言ってもいいよね』
「……うん。足りないくらいだよ」
それからオレは、ユズの事情を知っていそうな奴を使って、その犯人がボコられたことをさらっとカナにも伝えるようにしたんだけど……。
「は? 登校拒否?」
事情を知ったカナが、学校に来なくなったことをツバサから聞いた。
「なんでも、自分を守って柚子が転校したとか、そういう目で見られてたこととか知ったらしいわ。一体誰から聞いたんだか……」
「(いや、それは間違いなくオレだと思うけど……)」
……にしても。
「(何なのカナ! マジでヘタレじゃん! いい加減にしてよマジで!)」
責任を感じてるのか知らないけど、もうボコったんだからさっさとユズのところに行けよ!
「(……罪悪感。閉じこもってるだけで消えるんなら、オレだってそうしてるよ)」
でも、そんなので消えるわけないじゃん。ヘタレ。チカより重傷。はい決定。
「アタシたちもカナの家に行くんだけど。カナ入れてくれないのよ」
「(あいつ~……!)」
まあ責任を感じるのはわからないでもない。でも、このままじゃダメだ。
「(チカの時は、アキくんとかフジばあとか、あとは理事長がいい感じにしてくれた……)」
オレたちを入れてくれないなら、やっぱり誰か大人の人を頼った方がいいのか。
「(でも、大人も誰を信用していいかわかんないし……)」
現に、カナの組の奴らが今回ユズを襲ったんだ。味方かどうかなんて、もうわからない。
「(理事長なら……)」
彼ならきっと……。
いつだってオレらのことを支えてくれた。まあオウリが大好きすぎて気持ち悪いとこもあるけど。
「(……相談してみるか)」
ツバサにも、理事長に相談してみようと提案した。
「え? り、理事長に?」
「うん。だってオレら入れてくれないし、大人の人なら、なんとかカナを説得してくれるかもしれないでしょ?」



