すべてはあの花のために❽


 それからオレたちは、カナには内緒でユズに犯人の特徴を聞いたり、場所を聞いたりした。


「……どういう、こと……?」


 カナの家の人なら、もしかしたら何か知っているかもしれないと思ったけど。


「なんでゆずチャンのこと、最低女って……」

「(こく……)」


 ユズのことを聞こうとしたら、いきなりガチで人を殺しそうな目つきで睨まれて、話を聞いてくれるような状況じゃなくなった。


「(……ユズ、もしかしてまだ言ってないことあるんじゃ……)」


 もう、だめだ。隠し事はしたらダメなんだって。
 オレは、みんなにはこのことは聞かずに、ユズに連絡を取ることにした。


『はーい。どうしたの? ひなくん』

「ごめんねいきなり。今大丈夫?」

『うん? 大丈夫だけど……』

「あれからどう? 落ち着いた?」

『うん。まあすぐには……って感じだけど少しは。視線がないだけいいかなー』

「……そっか」

『どうしたの? 何かわかったことが……』

「ユズ。ちゃんと、全部話して欲しい」

『…………』

「今日、カナの家に行ったんだ。何か知ってるんじゃないかと思って」

『…………』

「でも、話すら聞いてくれなかった」

『…………』

「それに、カナを守ったユズが何で悪者になってるの。カナの家の人がどうしてそうなってるのか、知ってるんじゃないの」

『……気づい。ちゃったか……』

「ユズ……?」


 つらいことを思い出させてしまったと、申し訳ない気持ちになったが。


「……ユズ。信用して欲しい。カナのことも助けるし、ユズのことも守るよ」

『……ありがと、ひなくん』

「だから、何を隠してるのか教えて欲しい」

『……かなくんには、言わないで欲しい』

「本当は包み隠さず言いたいけど。……まあ、取り敢えずは言わないでおくよ」

『えー……』

「ぜーんぶ。……何もかも終わったら言ってもいいんじゃない? それでも駄目なの?」

『……きっとかなくん、ショックだから』

「そうかもしれないね。でも、カナも成長しなきゃいけない。もちろんユズも」

『……うん』

「ていうかさ、小学生にこんなこと言わせないでよ。頼むよマジで」

『はは。……うん。そう。だね』

「……言って? ユズ。絶対に助けるから」

『……うん。わかったよ、ひなくん』


 それからオレは、そのことをカナが成長するまで誰にも言わないことを条件に、ユズから話を聞いた。


『……襲ってきたのは。かなくんのとこの人なんだ……』


 ――――――…………
 ――――……