「それじゃあねつばちゃん。いつでも来なさい? お母さんがいろいろ伝授してあげるから」
「うん。……ありがと、母さん」
実はあのツバサのオカマクオリティーは、母さん伝授だったりする。まあおかしくなったりする前の話だけど。
「行かせるものか。翼はさっさとそんなものやめてしまいなさい」
とか言ってる父さんも、本気でツバサのことを止めようとしない当たり、心のどこかで申し訳ないとか思ってるのかもしれない。
「……日向。若葉を頼むな」
「……うん」
母さんが先に玄関から出て行った時、こっそりそんなことを言う。
「ん? なんだ?」
それでも、やっぱり最後の最後までみんな、オレのことを責めたりしなかった。
「……っ、なんでも、ない……」
罪悪感でいっぱいの自分のことなんて、誰も気がついてくれなかった。解放なんて。……してくれなかった。
ツバサが小学校を卒業すると同時に、オレは母さんと一緒に、今まで住んでいた家を大きな荷物とともに出て行った。
「(……? こんな荷物、あったっけ)」
そこには、積んだ覚えのない段ボールがあった。
「(……母さん、何か他に持って出てきたのか……)」
少なくとも、オレとハルナの荷物ではなかった。多分母さんのだろう。
……ここで荷物を確かめるなりなんなりしておけばよかったと思っても、もう後の祭りだけど。



