すべてはあの花のために❽


「うっせえなあー!! 言いたいことがあんならハッキリ言えよ!!」


 チカの両親が亡くなって、一旦は落ち着いたものの『そういう視線』が絶えることはなく。チカは『両親に見放された子ども』として常に見られる毎日を送っていた。
 オレも気にはかけていたけれど、こればっかりはいくら言ったって『そういう考え』を持ってる奴が、すぐに変わるとは限らない。……それも、チカにとっては限界が来たんだ。


 オレはクラスが違ったからあとから知ったけど、誰かがフジばあの悪口を言ったらしい。それで、ぷっつん来たチカは大暴れ。それを止めたアキくんもすごいけど、こいつらマジで強すぎだろと思ったね、うん。


「だれねぇえー! チカゼに悪いことしたんは! 出てき! 根性叩き直したる!」


 そのあと、連絡を受けたフジばあも、めっちゃ怖かった。
 チカを助けてやれなかった先生にはお説教はするわ、それらしき生徒を見つけては尻叩いてた。しかも当たってたしね。
 二人してあとで理事長に呼び出されてたけど、そこで理事長は謝ってたらしい。


『教師にも生徒にも、よく言っておきます。この度は申し訳ありませんでした』


 その頃にはもう理事長は引き継いでいて。なったばっかりだったけど、しっかりしてたよ。
 チカも嬉しかったみたいで、大号泣してたけど。……それを見ていた女子生徒たちのファンが増えたみたい。かわいいってつけ回されてたよ。超ウケたね、あれは。

 ……でもチカもさ、よかった。ほんと。ちょっと成長したと思う。アキくんの、フジばあの、理事長のおかげで。