すべてはあの花のために❽


「……え? 別居?」


 オレが小5になってすぐ、父さんと母さんがそう話した。時期はツバサが小学校を卒業してからにしたらしい。


「(……何、勝手に決めてんの)」


 別居もそうだけど、実の子どもたちを差し置いてそんなこと勝手に決めて欲しくなんてなかった。


「翼は俺のそばに置いておく。……変なことをされたら堪ったもんじゃない」

「変なことなんかじゃないっ……!」

「絶対にひなちゃんは渡さないから。あなたのそばにつばちゃんも置いておきたくないけど」

「……かあ、さん……」


 最初、父さんはオレら両方とも母さんのところへ預けて、一人で別居をするつもりだったみたいだ。


「翼! いい加減にスカートなど履くな! 俺の顔に泥を塗るつもりか!」

「俺は! 父さんがわかってくれるまで絶対にやめない!」


 でも、ツバサのオカマ計画進行中だったのが余程心配だったみたいで。目を離したら何をするかわからなかったからと、ツバサはそばへ置くことにしたらしい。


「ひなちゃんとはるちゃんと、三人でわたしは暮らすから。つばちゃんもいつでもこっちに来ていいからね」


 金銭面は父さんが出すみたいで、別居はあっという間に決まってしまった。
 オレとハルナの荷物、そして写真なんかも全部母さんは持って行きたかったみたいで、学校から帰ってきたら少しずつ荷物をまとめていった。


「……父さんもさ、危ないならそう言えばいいじゃんね」


 ヒイノさんが言っていた。もしかしたら本当にハナが関係してるのかもしれない。


「でも、今それどころじゃない……」


 自分だって調べたかった。ハルナの事故のこと。道明寺についても。


「今は、オレが母さんを守ってあげないと……」


 ハルナのことで、まだ心が立ち直っていなかった母さんを支えていきたかった。
 それに、……オレのせいで、ハルナは死んだんだから。