すべてはあの花のために❽


 そうこうしてたら、あっという間に駅に着いた。


「ひなたくん。何かあったらすぐに連絡しなさい」


 ふっと大人っぽくなるところとか、ハナの感じに似てる。


「オレらもできる限りのことはしたいと思ってる。……だが、だからって人様の大事な息子を、こんなことに巻き込んでしまってるんだ。きちんとオレらから話をさせて欲しい」

「……でも、オレの家族が味方かなんてわかりません」

「ひなたくん……」

「今、ちょっと家ごたついてるんです。だから、それが収まるまで多分無理ですね」

「……そう、なのか……」

「(ヒイノさんが言ってたこともあるし、もしかしたら父さんたちは、ハナのことを…………そんなこと、考えたくもない)」


 あまり引き止めては、講師の時間に支障が出てしまう。


「でも、オレもハナを助けるために頑張ります。だからミズカさんも、オレのこと信じててください」

「ああもちろんだ。……いつでも言ってこい。稽古でも何でもつけてやる」

「それは……まあ、ちょっとお願いしてみたい気もしますけど」

「だろう。相手が好きで好きでしょうがない奴ほど、その人のことをどうにか自分の手で守ってやりたいって思うもんだ」

「……自分の、手で……」


 そんな力。……今のオレにはない。


「強くなるって言うのは何も、腕っ節だけじゃない」

「え……?」

「オレは、めっぽう頭は弱いからな。それは無理だけど」

「(ぽいぽい)」

「だからオレの得意なところでひのちゃんのことを守ってやっただけだ。ひなたくんも、自分ができるところで、あおいのことを守ってやってくれ」

「……自分が、できること……」


 そう言って、ミズカは流石に時間が迫っていたのか。オレの頭をわしわしっと撫でてから車を走らせて行ってしまった。


「……うん。頑張る。助けるよ。守るよ。ハナ」


 それから二時間をかけて、オレは自宅がある最寄り駅まで帰っていった。