すべてはあの花のために❽


「ひのちゃんと何を話してたんだ?」

「ミズカさんが気持ち悪いってことです」

「え!? うそ! ストーカーだけど、気持ち悪いって一言も言われたことないのにっ!」

「え……」


 それは、気持ち悪い以前の問題だ。


「それにしても、まさか男の子に渡すとわなー。なんだ~? お前らデキてんのか?」

「(……この人には、ハナに女だと思われてることは絶対に教えないでおこう……)」


 何も言わないオレに「なんだ片思いかあ?」と茶化したように言ってくる。あー、送ってもらうの断ればよかったかも。


「青春しとけー? 恋はいいぞ! 愛もいいけどな!」

「はい?」


 なんだそれ。一緒じゃん。恋愛って言うぐらいだし。


「なんだ。お前、あおいが好きなのにその違いもわかんねえのか?」


 ヒイノさん。決めました。駒はこっちの人です。


「恋は落ちるもんだ。んでもって、愛は落ちた相手と育てるもんだ」

「キザですね」

「まあそう言うなって。オレとひのちゃんの出会いはなー」

「聞いてません読者の人も期待してません完全にこの話はカットです」

「ひのちゃんは学校一美人でかわいくってな~?」

「(……ダメだ。全然効いてない……)」


 どうやら二人の馴れ初めを話したいみたいで、他の話はするつもりがないみたいだ。オレは諦めてミズカさんの話を半分ぐらいは聞き流して聞いてあげることにした。


「学校一のひのちゃんにな? 殆どの男子はメロメロだったんだ」

「へえー」

「でもな、そん中にはいい奴ばっかじゃなかった」

「ふーん」

「そりゃ、ひのちゃんがただ好きな奴もいた。でも、どうにかしてひのちゃんと、そういうことがしたい奴があとを絶たなかったんだ」

「…………」

「学園一のマドンナだし? そんなことしたって言い触らしでもしたら、いい気分になるような奴なんかたくさんいた」

「…………」

「オレは、ひのちゃんに憧れてたし、お近付きにもなりたかったけど超ヘタレだったからな。ずっと陰から見てた」

「(もうすでに若干ストーカー)」

「腕っ節だけは強かったからな。そんな奴らがいたら、ひのちゃんにバレないように片っ端からやっつけてた」

「(そうなんだ。……あれ、そういえばこの人たちにハナいろいろ教えてもらったって書いてあったけど……)」

「バッタバッタとなぎ倒してたら、ある日ひのちゃんにバレちゃったんだよなー!」

「(あの時ビクともしなかった。それは、この人にいろいろ教わったからで……え。ハナってめっちゃ強い? もしかして)」

「でもな、ひのちゃんはオレに『ありがとう』って言ってくれたんだ」

「(オレも鍛えよ。ハナより強くないと。取り敢えず。……なんか嫌だ。この人に負けた気になる)」

「オレは正直に言ったんだ。あんたのこと、陰からずっと見てたんだって。だからオレもこいつらと同じで、捕まえられるぐらいのことはしたんだって」

「(あれ。でもさ、ハナはこの人に強くしてもらったんだよね。オレもこの人に教わった方が早……いや待て。それはなんか嫌だ、やっぱり。まだヒイノさんの方がいい。あのアッパーカットを伝授してもらおう。うん、そうしよう)」

「でもな、ひのちゃんは『ちゃんと見てたからわかってる』って言ってくれたんだ」

「(でも、別にハナにアッパーカットをするわけじゃないし……。あ、でもハナを守る時に使うかな。それか剣道めっちゃやるか……)」

「誰かはわからなかったけど、『助けてもらってる』っていうのは気づいてたみたいなんだ。だから、『今までずっと、わたしのこと見ててくれて、助けてくれてありがとう』って、そう言ってくれたんだ」

「(ってなったら、取り敢えず目の前の敵はツバサだな。そのあとは父さん……いや待て。父さんと今やったらオレ、ハナを助ける前に殺されると思うわ、絶対)」

「それから親しくなったオレたちはゴールインしたってわけだ」

「(ハナも助けないといけないけど、取り敢えずウチの問題もどうにかしないと……)」

「あれ? ひなたくん? 聞いてた?」

「あ、はい。被害者がやさしい女性で許してもらって、そして加害者と無理矢理結婚したって話ですよね」

「え。聞いてないと思うぞそれ……」

「冗談ですよ。……ちゃんと、見えてる人でよかったですね」


 大丈夫。ちゃんと聞いてましたよ。ストーカーって言ったって、ヒイノさんのことを思って守ってあげてたんだから、通報されるわけないのに。
 ……あ。でも、ヒイノさんだったからかもしれないな。ずっと見られてたら気持ち悪いって思う人もいるしね。