「……本当に、言ってるんですね」
それは、まるでお伽話のような話だ。でも、目の前の二人の目はマジだ。血走ってるから。
「……ほんとのとこは、さっきも言いましたけど、ハナから聞かないと信じられません」
「ええ。わかってる」
「でも、君しかいないんだ。あおいのことを大切だと思ってくれている、君しか」
「……どうしてあなたたちは、ハナを助けてあげられないんですか」
また黙りだ。
……でも、なんだ? すごい悔しそうな顔をしている。
「……わたしたちだって、動いてあの子のことを助けてあげたいわ」
「でも、身動きが。……できないんだ」
「……どういうことか、教えてくれるんですよね」
「「……それは……」」
「……あの。失礼ですけど、子どもだからって舐めないでもらえますか」
「「え?」」
「申し訳ないですけど、マジでハナのこと助けるんで。だから早く教えてくれませんかね、今すぐハナに会いに行きたいんですけど」
若干苛立ちを込めてそう言うと、二人は戸惑いが晴れたのか、話をしてくれた。
「……わたしたちは、あおいちゃんを人質に取られているの」
「え」
「人質と言っても、恐らくは殺しはしない。何故なら、あおいのことが必要でここから奪っていったんだから」
「……ちょっと。いきなり怖い話に」
「だから言ったでしょう? 生半可な覚悟じゃ、あおいちゃんは助けられないの」
「もしかしたらオレらも、あおいも、君も死ぬかもしれないような話だ」
「そうね。子どもだからって黙ってるのはおかしいわ。あおいちゃんが危ないと知っていても助けを求めたあなたに失礼だわ」
「怖くなったか? だったら今すぐ引け。この件に関して」
正直、死ぬかもしれないなんて、そんなことは考えていなかった。ただハナを助けたい。それだけだ。
……でも。
「……ハナを助けられるんなら、オレはなんだってしますよ」
「「ひなたくん……」」
「だからもう、隠すのはやめてください。あなた方がハナのことを大切に思ってるのも十分わかりました。そしてそれが故に、人質に取られて助けられないことも」
「……わかったわ」
「ありがとう。オレたちの代わりに……」
「お言葉ですけど」
「「――!!」」
「オレはオレの意思でハナを助けたいと思ってここまで来たんです。あなたたちの代わり? 冗談じゃない。申し訳ないですけど、ハナが助けられるんならたとえあなた方が死のうと知ったこっちゃないです。まあオレは死にたくないですけど」
「「え」」
「ハナが助かるならなんだってしますよ。たとえハナに嫌われることになったとしても。そうですね、犯罪者にだってなってやりますよ」
「「いや、それは不味い……」」
「それぐらいできる覚悟だって言ってるんですよ。だから、あなた方もオレは使います。悪しからず」
言った。言ってやったし。
でも本音だ。これがオレの…………。
「まだ聞きますか? オレの覚悟」
――そう。ハナを助ける、覚悟だ。
「(……やってやろうじゃん)」
ありとあらゆる手を使ってでも。
君を絶対に助けてあげるよ、あの家から。
……ね。ハナ。……ううん。あおい?



