「……ある花、生まれ落ちる……?」
意味がわからなかった。
「……それはある夏のこと……」
たくさんの文章を読んでいった。そこに書かれていたものすべて。
「……これ、ってさ……」
綺麗めに書いてあるかもしれないけど……。
「……捨てられたって、こと……?」
わからない。オレがそう思っただけだ。次々に読み進める。
「……ある花、海の魔女と出会う……」
海に落ちた子どもが、何かと引き替えに命を助けてもらう話。
「……ある花、植え替えられる……」
何かを取られた子どもを、夫婦が大切に育てる話。
「……ある花、生長する……」
子どもが花を育てて、大切さを学び、心を強くする話。
「……ある花、不幸を呼ぶ……」
嫌なことが起こり、夫婦を不幸にしてしまうことを恐れてしまう話。
「……ある花、人に貰われる……」
大好きな人たちが自分のせいで不幸になるのを恐れ、また違う人に貰われていく話。
――――……そして。
「……ある花、かわいい花に出会う……」
そこのページだけは、今までとは違っていた。文字自体も、……文字の大きさも。
「……ハナ」
そこに書かれていたのは、自分とハナの出会いだった。
「……そうか。ハナが泣いていたのは……」
【家に引き取られた、本当の理由】
……ううん。確かにそうかもしれないけれど。
「……もう。家が嫌だったんだね、ハナ」
だったら、そう言ってくれればよかったのに。
「……あの時、マジで帰すんじゃなかった」
そのまま、連れて帰ってしまえばよかったと後悔した。
そこには、この絵本を渡すまでのことが書かれていた。
「……丁度冬休みだし。早速助けに行きますか」
いろいろ準備もしていこう。うん。そうしよう。
未だ喧嘩ばかりの真っ暗な家の中にも、陽の光が差し込んだ。……そんな気がした。



