すべてはあの花のために❽




「…………。むかし。むかし」


 今日は、もう来ないんだろう。


「ある。ところに……」


 もしかして。自分が来なかった日に、来てたりしたのかな……。


「……とっても。きれいな。おはなが……」


 また来るよ。毎日。……まい。にち……。


「……。さいて。……っ。いました……」


 会いたい。今すぐに。


「はな。……は。な……」


 君の。声が聞きたい。


「……っ。はなっ……。っ」


 君の。笑顔が。……見たいんだっ。ハナ。



「ねえ、あなたはしってる?」


 家の中は、いつも怒鳴り声ばっかりだった。


「こんな素敵な物語」


 いつも。朝から晩まで、ここにきた。


「ひとつの花のお話を」


 ただいつか、ハナが来てくれることを信じて。



 ……だんだん暑くなった。


「……今日も来ないの。ハナ……」


 この絵本をもらって以来。


「……言ったじゃん。またねって」


 自分の気持ちを自覚して以来。


「……たすけるよ。はな……っ」


 彼女がここに、現れることはなく……。


「……だから。約束じゃん……」


 ただただ毎日、ここで太陽が沈むまで。


「……わかったら。……っ。おしえて。くれるって……」


 絵本をずっと。……読み続けた。