すべてはあの花のために❽


【 h e l p 】
『た す け て』


「……!! はな……?!」


 一体、どういうこと。
 急いで絵本を片手に、あの丘まで――――あの花畑まで走る。


「……。っ、はな……!」


 動かなかった。本当、さっきまで。


「……っ、はっ。……はなっ……!」


 怖かった。ほんと、ついさっきまで。



『……はな。ちゃんを。……ぜ。……たい。……たす、けて。あげ……』


 何で最期にハルナがあんなことを言ったのか。
 どうして、家よりもハナを心配したのか。
 ……どうして、いつもこの本を貸してなんて言ってきたのか。

 もしかしたら、気がついていたのかもしれない。今、自分が気づいたところじゃない箇所に。ハナのメッセージを、わかっていたのかもしれない。

 ……わからない。本当にそうなのかなんて。だってもう。あいつは空の上だから。
 でももし、わかっていなくても。……きっと何かあるんだろうって。泣いてるのには、わけがあるんだろうって。一緒になって心配してくれたんだ。


「……。いつだってっ。思ってたじゃないかっ……!」


 大切なハナを。……絶対に助けるって……!
 今。きっと一番怖いのは。――――ハナを助けられないことだ!


 丘の上に。花畑に着いた。


「……っ。はな……!」


 普段こんなに大きな声を出したことなんてない。


「はな! ……はなっ!!」


 いて欲しい。気がついたんだ。君のメッセージに。


「……はなっ……!」


 わかってる。いないのなんて。わかってるけど……。


「………………。っ、はなぁああー……!!」


 ただただ。彼女の名前を。呼び続けた。