あれから花畑に行けないまま、学年が変わった。
会いたい。声が聞きたい。笑顔が見たい。それは変わらない。いつだって、ハナのことを忘れたことなんてなかった。
……ただ。ぽっかり空いた心に。勇気を。自信を。吸い取られてしまったんだ。
小4に上がってすぐ、アキくんが誘拐されそうになったのを聞いた。
「……さくらさん……」
アキくんを庇って、お母さんのサクラさんは重い傷を負い、植物状態になった。
立て続けにシランさんも精神状態が不安定になったって言ってたし、前に紹介してもらってたシントさんも、行方不明になったって……。
「……おかしい」
子どもながらに、何かがおかしいと思った。こんな立て続けに人の不幸が、自分たちの身の回りで起こるなんて。
「……もしかして」
ハナも、その一人なんじゃないかと思った。
「……会いたい。会いたいよ。はな……」
そう思ったら余計……。
「でも。今のオレは。ハナを。笑わせてあげられない」
行っても。……来ないんじゃないかって。
「……っ。今のオレには。勇気が。ない……」
もう。……来ないんじゃないかって。
会いたい。 ……怖い。
声が聞きたい。……勇気が出ない。
笑顔が見たい。……自信が。ない。
そんな気持ちが。……オレの心を支配する。
「はるな。…………っ。はるな」
ただいつも、ハルナの部屋で。
もういなくなってしまった姉の名を。
「……。っ。は、な。はな。……っ」
絵本を抱き締めながら。
もう会えないかもしれない彼女の名を。
目から流れるその涙で。空いた心を埋め尽くした。
「……。え……?」
……なんだ。これ……。
零れた。大粒の涙が。絵本にシミを作る度……。
「……。いろ、が……」
表紙の文字が。色が。……ついていく……?
「…………っ!」
急いで濡らしたハンカチで、その絵本の表紙全体を濡らす。
「…………。はな……?」
そこに浮き上がってきた文字は――――。



