すべてはあの花のために❽


「お前がちゃんと見ていなかったからだ!」


 家の中でハルナの名前が出ると、父さんがそうやって母さんを責めた。


「何を言ってるの! そもそもあなたも――」


 父さんを支えていきたかった母さんも、そんなことをずっと言われ続けて父さんのことを責め返す。
 毎日が、家の中で責任の擦り付け合いだった。


「……。はるな……」


 苦しかった。毎日が。嫌だった。家にいるのが。


「……。もう。どうしたら……」



『……あの子のこと、大切にしてあげて』


 いつも、そう言ってた。


『ひなならできる。……ううん。ひなにしかできないよ』


 ……でも。オレにはっ。ハルナがいないと……。

 そこでふと、ハナからもらった絵本が目に入った。


「……はな」


 会いたかった。でも、会いに行けなかった。


「……っ。はな。……っ」


 今のオレは。ハナを。笑わせてあげられない。


「……。っ。……っ、は。な……」


 今のオレには。……勇気がない。
 ただただ涙を流しながら、……絵本を抱き締めていた。