すべてはあの花のために❽


「それでー? どうするの?」

「……それを。相談しに……」


 でも、決して茶化さないで聞いてくれる。


「……つぎ。どんな顔して会ったらいいか……」

「え。なに? ひょっとこのお面でもつけていく気だったの?」

「そんなわけ。ないじゃん……」

「ありゃ。これは重傷ですな……」


 茶化さない。けどボケてくる。
 突っ込む元気もないんだって。わかってよ。


「ひなが思うようにしたらいと思うよ?」

「……そしたらハナ、家に帰れない……」

「おう。これはこれは……」

「……どう。したらいい……?」


 もう限界だ。苦しい。会ってる時の方がまだよかった。
 今は、次がいつ会えるのかとか。会えない間の時間とか。……ハナのことを考えるだけで、苦しい。


「……だったらさ、もうここがいいタイミングなんじゃないかな?」

「……?」

「ひな。勇気出しなよ」

「……やっぱり。そうなる……?」


 また一回り小さくなる。
 だって。怖いんだ。嫌われたりでもしたら。オレは……。


「……あれ」


 そう言ってハルナが指差すのは、ハナからもらった絵本。


「ひなのこと、信じて渡してくれたんでしょ?」

「……ん」

「あの子が信じてくれてるのに、ひながあの子を信じないでどうするの?」

「はるな……」


 そういえばこいつ、あの一回以来ハナの名前呼んでない。


「(……あの時ちょっとだけムカついたのも。こいつはわかったのかもしれない……)」


 全部見透かされてて、ちょっと嫌だったけど。でも、今はわかってくれるから、助かってるところもある。


「決めるのはひなだ。あたしじゃない」

「……うん」

「この勇気には、あたしも貸してあげられない」

「……う、ん」

「……でもさ? もう使ってないんじゃない?」

「え……?」


 そう言ってハルナは小さく笑う。


「意識して、あたしになりきろうとしてる? ほとんど意識してないんじゃない?」


 言われてみれば、ほとんど意識してなかった。
 ハルナだったらとか、初めの方はそんなことばっかり考えてたけど……。


「(……あれ? おれ。もしかして……)」


 ほとんど、素だった……?


「わかんないよ? あたしが勝手にそうなんじゃないかなって思ってるだけだから」

「……う、ん」
 

 ビックリした。
 オレ自身でも、ハナの涙を止められるんだ。ハナを。……笑顔にさせてあげられるんだ。