すべてはあの花のために❽


「はは。冗談だよ? 慌ててる~」


 でも、……今はそう言っておく。オレにもう少し、勇気がつくまで。


「え!? ……る、るにちゃん……!」


 そう言ったらハナはオレに飛びかかってきて、めっちゃくすぐってきた。


「や。やめっ。……はなちゃん! すとっぷ……!」

「いやだよ~ん。こちょこちょこちょ~」


 無理ムリむりーっ! ダメダメ! ……っ。弱いんだから!
 でも結局、ハナに何回言ってもやめてもらえなかった。


「(……て。ていうか。びくともしなかったんだけど……)」


 酸欠で倒れそうになる直前までくすぐられた。今度会ったら、絶対仕返ししてやるし。

 流石にこれ以上遅くなったら心配するから、名残惜しいけど帰ることになった。


「それじゃあね! ルニちゃん!」

「……次会ったら、絶対一番にハナちゃんくすぐるから」


 絶対だから! 覚悟しててよね!
 そう言って、いつもの分かれ道に来てちょっと離れて、一回振り返る。


「それじゃあまたね! ルニちゃん!」

「またね。ハナちゃん」


 そうやって手を振って帰る。


「(……次は、いつあそこに来てくれるかな……)」


 いつも思う。ここで別れる時は必ず。
 毎日あそこに行って。それで、いつもハナが来ない日は肩を落として帰る。


「(……次会えるのは楽しみだ。それはほんと)」


 でももう、気持ちを自覚しちゃったら。……離れたくなんて。なかった。


「それじゃあ、いくよ~!」


 そう言って、二人していっつも同時に帰り道の方へ向いて歩き出す。でも、オレがしたことなんか一度もない。いっつも振りだけ。
 ハナの姿が見えなくなるまでずっと。オレはずっと。そのちいさな背中を、見続けるんだ。今日も後ろを向いた振りだけして、ハナのことを見ていたんだけど……。


「…………え?」

「(え……?)」


 今日は、ハナがもう一度こっちを向いてきた。
 ……ただ。それだけのことなのに。また胸が、小さく鳴った。


「あーあ。ばれちゃった」


 だめだ。このままだったら……。


「ほらハナちゃん。早く帰って? 帰れないから」


 ハナが。……帰れなくなる。


「え? ……え? る、……るにちゃん……?」


 帰したくないんだ。ほんとは。


「……帰らないと、またちゅーするぞ」


 絶対しちゃうから。だから……早く。


「……!! か、帰る!! ……ま、また。ね……?」


 そう言って、来る時みたいにダーッ!! って走って帰ったけど。


「(……そんなにいやなのかな)」


 ちょっぴりショックを受けていたりする。