すべてはあの花のために❽


 そうこうしているうちに、帰る時間になってしまった。


「あ。……もうこんな時間か」

「……いやだなあ」


 そう言って、ハナが服をぎゅっと掴んでくる。
 その仕草だけで。寂しそうな声で。胸が、きゅうって苦しくなる。


「……ハナちゃん? また遊ぶでしょ?」

「……うん。あそぶ」


 どうしたんだろう。今日は珍しく我が儘だ。


「……それじゃあ、もうちょっとだけね?」


 それに。……オレも、もうちょっといたい。
 ハナの小さい手を、ぎゅーっと握る。


「あったかい……」

「こどもだからね」


 でも、ハナの隣にいる時が。……きっと、一番あたたかい。


「やっぱりルニちゃんはおひさまの子なんだね!」


 そんなことを言ってくれる。
 でもきっとハルナを見たら、ハルナの方がおひさまなんだろうなって、思うんだろうな。


「おひさま……? ふつうにお母さんから生まれたけど……」

「はは。ううん、なんかそんな感じがしていいなって思って」


 いいな、か。おひさまって言われるのがハナしかいないから、よくわかんないけど……。でも、ハナから言われるだけで、オレは十分嬉しかった。


「だったら、ハナちゃんはお花の子……お花のお姫さまだね」

「え? ……わ、わたしはそんなきれいなものじゃないよ」


 慌ててそんなことを言ってくるけど、オレは会った時からそう思ってる。
 ハナがオレのことをそう思ってくれるんだ。オレ自身だってそう思ってなかったことを。


「ハナちゃんがほんとにそう思ってたとしても、あたしがそう思ってるからいいの」


 ハナは、花の妖精。……ううん。花のお姫様。絵本にだってなってるし。


「……ほんとうは、悪魔の子かもしれないのに……?」


 ――そんなの、有り得ない。


「それだけはないね」

「……なんで。そう言ってくれるの……?」


 いつも、何かに苦しそうに。つらそうに。悲しそうに。寂しそうに泣く子が。
 ひとりぼっちで、誰にも言わない強い子が。
 綺麗な涙を流す子が。……とっても笑顔の素敵な子が。