すべてはあの花のために❽


 早速絵本を開いて、どんな話なのかなって読んでみた。


「(……おれにくれた。うれしい)」


 そう思いながら読んでいたけど。どこか、違和感がある。


「(……1ページでお話が終わってる。それにページをめくったら、また『むかしむかし』から始まってるし……)」


 後半の方は1ページで収まってない話もあったけど、意味がわからなかった。


「【むかしむかし】、いっぱいある。作った人下手だね」


 でも、なんでこんなに引きつけられるんだろう。……不思議な絵本だ。


「……これ。その人が、わたしを主人公に描いてくれた絵本なの」

「(……どうしよ。下手くそとか言っちゃったんだけど……)」


 オレ最低じゃん!
 頭を抱えようとしたら、「ルニちゃんに、渡したいって思ったの」って。やさしい声が、降ってくる。


「っ、え。……な、なんで?」


 絵本を閉じてハナに視線を向けると、そのやさしい声と一緒の顔でオレを見つめてくれていた。


「……その人がね? わたしが信じることができる、大切で、大好きな人に渡しなさいって言ったの」

「……そ、そんな大事なものなのに。あ、あたしで。いいの……?」


 そんな大事なものなのに。……オレで。いいのかな。


「うん。ルニちゃんがいい。ルニちゃんじゃないと嫌」


 そう即答するハナに、驚いた。


「(……おれじゃないと。いやなんだ……)」


 ……嬉しかった。本当に。
 そんな大事なものをオレにくれるくらい、ハナに信じてもらえたことが。……でも。


「……お家の人とかじゃなくて、いいの?」


 オレはまだ子どもだ。大切なら、きちんと家の人に渡した方がいい。


「うん。ダメだって、言われたの。描いてくれた人に」


「……そうなんだ」


 ……そんなことがあるんだろうか。
 ハナは、……家族じゃなくて、絵本を描いてくれた人が言ったことを守ってるんだ。そんなに信じられる、誰かもわからない人に、……少しだけ妬ける。

 そんなことを思っていたら、「わたしの。……大事な人なんだ」と。ハナがオレの手をそっと取る。


「わたしが、本当に信用できる人に渡してって」


 ……オレのこと。信じてくれるんだ。


「守ってあげたいって思う人に、渡しなさいって」

「ハナちゃん……」


 オレも、守ってあげたい。


「わたしがそう思うってことは、向こうもそう思ってくれているはずだからって。そう言われたの」

「……えっと」


 お。思ってる。けど。……言えなかった。まだ、自覚したばかりだから。


「だから自分を信じろって。そしてその人を信じろって。……そう言われたの」

「……。はな、ちゃん……?」


 どうしたんだろうか。ハナの顔に、影が差していっている。
 俯き加減のハナの顔を覗き込もうとしたら、ガバッ! と顔を上げた。


「……ま! わたしが今大切なのはルニちゃんだけってこと! 大事で、大好きなのは、ルニちゃんだけだよ?」

「……!!」


 とびっきりの笑顔で、ハナがそう言ってきた。

 たいせつ。……だいじ。だいすき……。