すべてはあの花のために❽


「(うわ! おれめっちゃ気持ち悪い! つばさより! ちかより!)」


 取り敢えず、気持ち悪い考えを払拭するかのように頭を振る。


「何でもないっ」


 そう言って、何か気を紛らわすものを探して……やっぱり花しかないので、それで遊んだ。


「え? ……い、いいの?」

「うん。冗談だし」


 優越感に浸ってたとか言ったら、絶対嫌われる。


「……許してくれるの?」

「え。……許すも何も、あれ事故だし」


 それに、……うれしかったし。事故でも。
 でも、ハナがこれっきりここに来なくなるのは嫌だったから。


「だから、また遊んで?」


 そう言って、すぐに次の約束を取り付ける。
 そうしたら、何か知らないけどハナがもぞもぞし出した。


「……あ。あのね? ルニちゃんっ」

「ん? なに? ハナちゃん」


 どうしたのかな? と思っていたら、何かの本を目の前に出された。


「……ん? なに? これ」


 見たこともないような本だった。


「……これね? ルニちゃんにもらって欲しいのっ!」

「(……なんでそんなに必死なのかな……)」


 そう思いつつ、オレはハナが出してきた絵本に手を伸ばす。


「(……英語だ。おれまだ習ってない……)」


【The name of the flower...】

 絵本の表紙に、そう書いてある。


「英語……【ざ なめ おふ ざ ふろうぇー】?」


 ……絶対違う。自信がある。
 そう思ったら、案の定ハナが笑いながら「ははっ。違うよ~ルニちゃん」と言ってオレの横にぴったりと座ってくる。

 全然ハナのその笑い方が、嫌じゃなかった。いつもなら笑われたらぶん殴る。特にチカ。
 でも、……今はそんなことじゃなくって。


「(――……! ちょ。まずいって……っ)」


 近くなった距離に、体温が上がる。それを、バレないように必死に耐える。


「【ざ ねいむ おぶ ざ ふらわー】って読むんだよ?」


 絵本の題名に触れながら、やさしい顔と声でそう言ってくる。