すべてはあの花のために❽


「今日も来そうな気がするな~」


 もう木の陰に隠れていたり、草むらに隠れているのはやめた。


「(……おれ、戦場カメラマンになれるかもしれない……)」


 そうこうしているうちに、今日はそんなに大きな音じゃなかったけど、足音と砂煙で来たのがわかった。


「(……よし。今日は受け止めてあげよう)」


 立ち上がって振り返ると、嬉しそうに笑いながら走ってきていた。


「(……あれ? 今日は泣いてない……)」


 そう思っていると、ハナがオレに気づいて名前を呼ぶ。


「あ! ……っ、る、るにちゃ――うっわあ!!」


 ハナが、何かを避けようとして足を外したところが悪かったみたいで。


「え!? は、はな――……んっ!」


 オレに激突。突っ込んできたはいいものの、勢いがすごすぎて支えきれずに後ろへ倒れたけど……。


「「…………」」


 お互い、何が起こったのかわからなかった。

 オレとハナの距離はゼロ。オレの上に被さっていたハナが、ゆっくりと体を起こす。離れていく間、お互いが視線を逸らせられなかった。


「!?!? わわわ! ご、ごめんねルニちゃん……!」


 いち早く状況を把握したハナが、オレにそう謝ってくる。……あやまる? なんで。

 そんな必要、……ないし。


「………………」


 そっと、触れ合った唇に手を添える。


「いやだったね? ごめんね? うわ~……。どうしよう。お口同士は特別じゃないといけないのにいぃ……」


 ……いや? そんなわけない。

 慌ててるハナを、どこか冷静に見つめる。
 女は、正直苦手だった。お母さんとハルナとキサ以外。

 ……あ。違うか。ここにハナも入るはず。