すべてはあの花のために❽


「……こんの。…………ばっきゃろー!!!!」

「(え!? ば、ばっきゃろー??)」

「ふざけんなー! くそー!!」

「(ふざけ……く、くそー?)」


 こんなかわいらしい子から、そんな言葉が出てくるとは思わなかった。


「なんでわたしがそんなことせんにゃならんのじゃーい!!」

「??」

「なんでわたしばっかりっ!! ……わたしっ。ばっかりっ……」

「(あ。また、泣いちゃった……)」


 女の子は膝から崩れ落ちて、また涙を流し始めてしまった。


「つらいっ。……つらいよっ……」


 ……なんで。


「くるしいっ。……っ、いやだっ。いやだよお……」


 ……なにが。いやなの?


「なんでこんなことっ。……かなしいっ。いやだっ、もう……っ」


 なにが。……そこまで君を。泣かせてるんだ。

 なんで泣いてるのか、そんなことは彼女は口には出さなかった。ただきっと、今の苦しい気持ちだけを、ずっと口に出してた。


「……さみしいよぉ。会いたいっ。……また、ぎゅってしてよ……っ」

「(……さみ、しい……)」


『だれかがいると、あったかいよね』


 ……ハルナが言ってた。
 うん。……オレも、そう思う。


「わらってよっ。……おいしいごはんっ。たべたい。……はたけしごともっ。おてつだい。ちゃんとするから……っ」

「(……ぎゅって。する。……わ、らう……)」


 オレは、……ハルナだ。
 この子の前では、……――ハルナだ。


「だからっ。もういっかい、だきしめてよっ。……しあわせそうにっ。わらって――……!?」


 女の子が言い切る前にそっと、その子の体を抱き締めて、ぎゅーっと力を入れてやる。


「え……? え……??」


 慌ててる。そんな姿もかわいい。
 笑わなきゃと思ったら、また勝手に頬が緩む。この子のこと、考えてたからかな。体の緊張が取れた気がした。彼女の力が、すっと抜けた。

 ……スッキリ、したかな……。


「……どう?」

「え……?」


 あー。ダメだったかな。


「な。……なにが?」

「スッキリした?」


 やっぱりダメだったみたいで、女の子は首を傾げた。
 ……ま、でもそうだと思うよ。オレでも、口に出しただけでスッキリしないからチカいじめるもん。


「……よく、わかんない……」

「ま、そうだろうね」

「え……!?」

「(うーん。でも、はるなにほかの方法、教えてもらってないからな……)」


 ……うん。こうなったら、とことんしてみてもらおう。そうしよう。
 そんなことを考えながら、すっと体を離してまた隣に座ってあげる。


「だったらスッキリするまで言ったらいいよ」

「え……?」

「(だってほかに方法わかんないんだもん)」


 だから、取り敢えずやってみてもらいたかったので目で訴えた。
 そしたら慌ててまた、さっきみたいな苦しい言葉をたくさん言っていた。


「(……おれがくるしい……)」


 言う度に。言葉にする度に。彼女からはまた、新しい涙が溢れ出た。


「(……やっぱりおれには……)」


 泣かせてしまうことしかできないんだ。