すべてはあの花のために❽


 次の日から、オレはハルナの服を着て、外に出かけていた。流石に近所の人とかにハルナと間違えられるけど、そこはなんとか誤魔化しておいた。
 みんなと遊ぶ日じゃない日だって、毎日のようにあそこであの子を待った。カメラは置いてきた。……持ってないと、寂しかった。


「(……そっか。たしかに、一人はさみしい……)」


 心細かった。不安だった。怖かった。


「(……でもおれは、今はるなだから。だいじょうぶだ)」


 そう言い聞かせて、あそこで彼女が来るのを待った。


 そして、その日はみんなで遊ぶ日だった。
 ハルナが気を利かせてくれたおかげで、オレが女の恰好をしていても、みんなは「楽しそうだね」と言うだけで、笑っても来なかったし聞いても来なかった。


「……はる、な」

「行ってくる?」

「うん。……い、く」

「そっか」


 みんなでかくれんぼをしていた。鬼はチカ。
 絶対に見つからない自信がある。あ、いや。そっちに今自信はいらないんだった。


「……はるな、借りてくから」

「うん。……あんまり、おそくなんないようにね? かくれんぼ中に抜けたら、みんな心配するから」

「うん。……おそらくちかが、おれらを見つけられずに泣き出すから、それまでには帰ってくる」

「ははは。たしかにねー」

「……い、いって。くる」

「……ひな」


 そう言うと、何故かハルナはオレの頭を両手で掴んできて。


「「――……!! ~~……っ。……った~……」」


 ごつ~んっ!! と何故か、思い切り頭をぶつけて来やがった。


「……な。なに。して……」

「いたーい……」


 お互い、おでこを押さえつける。
 ……絶対たんこぶになる。それだけは阻止しないと、あの子に笑われる。


「……こ。これで。いま。……あんたは。あたしだ!」

「……へ?」

「今。入れかわったからな! あたしはあんただっ」

「……そ、か」


 未だにじんじんする頭を抱えながら立ち上がる。


「……それじゃあ、行ってくる!」

「はーい。いってらっしゃーい」


 まさにチェンジしたかのように、二人してそう言う。それがちょっとおかしくて、二人して笑った。
 それからオレはこっそり抜け出して、あの子が来る場所へと足を進めた。