「私と賭けをしませんか?」
賭けをしようハナ。
こんな、捻くれた。拗れた。歪みきった。汚いオレと。
決めたんだ。オレの幸せは、オレが決めるんだから。
「私は必ず、あなたの好きな人になってみせますよ」
どうか。この姿の男を好きになって。
「とても負けず嫌いなもので。……絶対にあなたを、振り向かせてみせます」
絶対幸せにさせてあげる。そのためなら、向こう側のレンだってオレがこっち側に引き入れてあげる。
「この恰好は今夜限り。この姿であなたに会うことはもう二度とないでしょう」
こんな恰好、偽物しかしない。……ほんのひととき。その、綺麗なお姫様の隣に立ちたいと。願ってしまった愚かな奴。
綺麗な姫の隣には……本物の王子がいるべきだ。
「それでも私は、必ずあなたの傍にいて、あなたのことをちゃんと見ています」
……でも。それでもオレは。やっぱり愚かなんだ。
もう一度帽子の中から、今度は真っ白いストールを取り出してハナに掛けてやる。
――――そう。これは、二重の賭け――――。
「私は必ず、あなたを幸せな道へと導きましょう」
もし。ハナの本当の幸せへの道に。オレがいるのなら――……。
「あなたの道を変えることができたその時……改めて、私の自己紹介をさせてください。もちろん『あなた』もですよ」
これっぽっちの可能性もない。不可能に近いけど。……どうしようもなく。君が好きでしょうがないから。
こんなことをするオレをどうか。……許して欲しい。
最後にもう一度帽子に手を入れ、白い薔薇を差し出す。
「その時が来たら、きちんと『私』を見てください。今度はあなたが」
もしオレを好きになってくれるのなら。
……オレを見て。ハナ。
「けれど、その時にはきっともう、あなたは私に“新しい恋”をしているでしょう。私は、それを確信しています」
きっと。この姿に恋をするだろう。それはもう、確信に近い。ここまであのハナが、心を許したんだから。
「私にできないことはありません」
ハナのことに関して、オレができないことなんてないんだ。
「……待っていてください」
だからどうか。信じて待っていて。絶対に。何もかもを。変えてみせるから。
「必ずや、私があなた自身も、あなたの心も。盗んでご覧に入れましょう」
……自信? そんなの、オレじゃない奴を好きにさせる自信だ。オレ自身を好きにさせる自信なんて、これっぽっちもない。
――この賭けの、本当の意味。
ひとつは、ハナを幸せに導くために、気持ちを。運命を。そして考えを全て変えてあげること。そして変えられた時。オレが勝ったその時は、ハナとレンの。……お姫様と王子様の架け橋になろう。
そしてもうひとつは、もし好きになった相手が王子の隣ならそれが本当の幸せだけど……でも、もし。万が一。こんな汚いオレを好きになってくれるのなら。
……君に。すべてを明かそう。
今までオレが、どんなことをしてきたのか。今までオレが、どんなバカなことをしてたのか。オレがルニだってことも。この姿を借りたことも。……君が、どれだけ好きなのかも。
必ず。……約束するよ。
「(オレを選んだら――)」



