すべてはあの花のために❽


「……っ、はっ。ふ、ん……」


 泣きながらだから、ちょっと息が苦しそう。……でも、ごめん。止まらないんだ。嬉しくて。
 そうしてたら、いつの間にかオレに合わせてくれていた。そんなハナが、……誰よりも愛おしかった。

 でも流石に苦しそうになったから、少しだけ離してあげる。……にしても。


「なんで抵抗、しないんですか」


 真っ赤な顔をしているハナは、まんざらでもない様子で啄むようなキスも受け入れてくれる。


「ん。……わ。わかんない。です……」


 本気でそんなこと言ってるの? そんなこと言われたら。……いじめたくなるじゃん。
 ハナが耳が弱いのは、ちょっと思い出してイラッとしたけどカナで実証済みだし。案の定攻めたらかわいくて甘い声を出す。


「だめ。塞がないで」


 好きなんだ。ハナの声が。
 聞かせて? オレのせいで出てくる。その、甘い声。もっと。もっと――……。

 そうこうしていたら、いつの間にかハナの首が大変なことに。


「……あ。暴走しすぎた」


 なんでこんなになっても止めないの、はなっ。オレも、ちょっと恥ずかしいじゃん。


「……。とめて。ほしく、なくて……」


 わかってんの……?
 そんな真っ赤な顔で。潤んだ瞳で。そんなこと言われたら――……そんなのもう、止めらんないから。

 一応断りは入れた。こんなこと、するつもりなかったのに。全部、ハナがかわいいせいだから。
 繋がりたかった。深く。……ふかく。触れるだけで、幸せが溢れ出る。もう、依存してしまいそうなぐらい。……ううん。もう、ずっと前からオレは、依存してるんだ。あの時触れた、ハナのやわらかい唇に。香りに。あったかさに。……ゼロの距離に。

 苦しそうだった。でも、やめたくなんてなかった。ちょっとだけ離れて、ハナが落ち着いたらまた繋がった。
 そんなことしてる自分たちがおかしかった。それはハナも思ってるみたいで、小さく笑い合った。

 オレがそっとハナの腰に腕を回したら、少しびくっとハナの体が震える。ダメかな……って思ったら、ハナはぎこちなくオレの首に腕を回してくれた。


「(なんかもう。離したくないな……)」


 そんなことを思いながら。ハナにもっと深く、口づけをした。


「(でもさ、誰かもわからないのに。ハナも、初めて会った奴にこんなことされてるのに。何必死に応えようとしてんだよ)」


 ――妬いた。誰にか? そんなの、自分自身だし。この、仮の姿のオレにだし。しかも、今日はあいつにもされてた。
 完全に歪んでるよね。わかってる。ハナが悪いわけじゃないんだろうって。……でも、やっぱりハナがかわいいのが、全部悪い。

 でも、もう流石に限界みたい。もっと声聞きたかったんだけど。残念。


「実は私、好きな人にはとことん意地悪になる質でして」


 こんなこと、ハナにしかするわけないじゃん。ばーか。


「でも、とてもかわいらしかった」


 オレがそう言ったら、またハナが顔を赤くした。
 それにかわいいなと思うと同時――ちくっと、胸が針で刺されたように痛んだ。


「(え……)」


 いや、そんなことはない。
 これでいいんだから。ハナが幸せなら……。