すべてはあの花のために❽


 ハルナの手を、ぎゅっと掴む。


「……だいじょうぶ、かな……」

「ひな……」

「……どうしよ。泣かせたりしたらっ……」

「だいじょうぶだよ。いつものひなでいいんだよ」

「……できる。かな。おれに……」

「うん。できるよ? あたしで役に立てるなら、あたしにならできると思うなら、そう思い込みな?」

「こんな男勝りに。おれはなれない」

「だから。なれって言ってるんじゃなくて、思えって言ってるんだって……」

「ははっ。……そっか。うん。なりきる、ね」

「……自分に自信がないなら。つくまで貸してあげるからね」

「……うん。勇気、もらう」

「うんうん! それじゃあ、そうと決まれば!」

「え?」


 そう言ってハルナが、何故か自分の服を漁りだした。


「さあ弟よ! どれにする!?」

「……え」


 バサーッと広げてきたのは、ハルナの服。


「え。……あ、あのさ。別におれがそう思えばいいだけじゃ……」

「何言ってるのー! まずは見た目から入らないとダメでしょー!」

「いやいや、めっちゃそっくりだし……」

「ばっかだねー。ひなね、あれだよ。女の子相手だから、男の自分だと自信がないと思っちゃうんだよ!」

「え。……お、おれ。相手が女の子だって言ったっけ……」

「え? ちがうの?」

「(うわ……。そういえばてきとーだった、こいつ……)」

「きっとそうなんじゃないかな~っと思ったからね? だから、女のあたしなら声かけやすいのかと思ったんだよー」

「(そんなこと思ってなかったけど。……まあたしかに言われてみればそうかも……)」


 女になりきる、……か。
 ただでさえ、クラスの女子とか苦手なのに……。……うわ。想像しただけで気持ち悪い。


「取り敢えずは形から入るってことで! さあ! どれにする!?」


 どれにする、と言われても……。


「いや、さすがにスカートははきたくない……」

「え!? 一発で女の子ってわかるのに!? さすがにこれはいてたらわかんないでしょ~」


 ハルナだって滅多に履かないくせに、そんなことを言ってくる。


「いや、それだともしバレたときが気まずいんだけど……」

「え? いやいやー、バレないでしょー」

「……もしさ」

「ん?」

「ふとしたひょうしにスカートめくった下にーーーーとか見えちゃったら。……はるな、どうするの」

「…………」