すべてはあの花のために❽


 表彰式も終わり、控え室で一旦集まってハナの挑発にみんなが乗って。急いで着替えて会場へ駆けて行っていた。


「(さてさて。オレはなりきりキットを取りに行かないとねー)」


 と言っても、頼んだ本人はさっきちょこっとステージに上がってきたし、ステージ裏にまだいるんだろう。


「理事長? いますかー」

「いるいる。ていうか日向くん、駒使い荒いよ……」

「まあ理事長だし」

「普通の人は、理事長こんなに扱き使わないよ? だって、理事長だよ??」

「はいはい。わかったんで、例のブツを早く寄越しなさい」

「なんか悪いことしてるみたいだね!」

「まあなりきられてる人にとったら、勝手にされてるんだから、嬉しくないでしょうね」

「ええ!? 言ってないの!?」

「こんなこと言えるわけないでしょ」

「そう? 替えっこしても面白そうだけど……」

「じゃ、もし機会があれば」


 貰った中身を開ける。


「……なんですか、これ」

「え? 『声変わるンデスくん』だよ!」

「(マジで名探偵になれそう。しかもネーミングセンスがアオイと完全に同レベル……)」

「あと、銀色のスプレーも入れてるからね」

「はい。ありがとうございます」

「お湯で洗ったら落ちるからね~。とっても強力だから、それ以外は簡単には落ちないよ。安心してね」


 世の中にはいろいろとハイテクなものができたものだ。


「……理事長。まだ時間あります?」

「ん? ぼくはいいけど……日向くんはいいの?」

「すぐ終わるんで」

「……何があったのかな」


 オレの切迫した雰囲気を感じ取って、理事長も真剣な面持ちになる。


「まずは昨日。ツバサが少しの間、講堂の奈落に閉じ込められました」

「……!!」

「まあ、それはあいつがちゃんと見つけたみたいです。ツバサはただ眠っていて、どうしてここに来たのかわからなくなっていました」

「……そ、れは……」

「はい。恐らくですが、道明寺が関係しています」

「……君は、そこまで知ってしまったんだね」

「どんなことを知ったとしてもあいつは助けるんで、安心してください」

「ああ。ありがとう」

「それからもう一つ。特に何もなかったんですが、今日あいつはミスコンに出るよう、昨日指示されていたようです」

「……そう、か」

「目的はわかりませんが、……脅迫メールというんでしょうか。それが送られてきたそうです」

「……!!」

「《マタ明日ネ》……まだ、その明日は終わっていません。残りの時間、理事長も校外から誰も入ってくることがないように。それから校内にも部外者がいないように、注意して見ていてやってください」

「……ああ。わかったよ」


 それだけ言って、オレはもう一度男性の更衣室へと戻っていった。