すべてはあの花のために❽


 昔、ハナを驚かせようと思ってテレビを見ながら、ハルナを実験台にしていろんなことを覚えてたりする。今思えば恥ずかしい。


「何がいいですかね。取り敢えず帽子も出しましょうか」


 もう一枚のハンカチから、ぽんっと出したのはシルクハット。
 何かを出すたびに会場が反応するのがウケる。そんな大したことじゃないのにね。タネも仕掛けもあるんだって。冷めた人間だったなー。子どもの頃も。


「はい。何がいいですか? 何出して欲しいです?」

『え? ……じゃ、じゃあ鳩とかどうですか?』

「あー残念。今日はお留守番してるんです」

『え……』

「他他。なんかないですか」

『え。……じゃ、じゃあ。桜吹雪……とか?』

「そんなの時季外れじゃないですか。花咲か爺さんじゃないんだからできませんよ」

『えー……』


 まあでも、そうだな。花……ね。


「桜吹雪まではいきませんけど……はい。それじゃあこの帽子に手を突っ込んでください」

『え? は、はい。わかりました』

「何も入ってないですよね?」

『え? ……はい、そうですね。すぐ底に手が当たります』

「それじゃあ一回出してください」


 そして実況の人が手を出して、一回ステッキでこつんと叩く。


「はい。それじゃあもう一回突っ込んでくださーい」


 言われるがままに、実況者はもう一度帽子に手を突っ込んでくる。


『……ん?』

「はい。それじゃあそれ、あなたにあげるんで」


 彼がそれを掴んだと思って、一気にシルクハットをハンカチに戻す。


『……こ、これは……』

「それ使って、今夜は好きな相手をダンスにでも誘ってみたらどうですかー(ま、そんなの撃沈するに決まってるけどね。キサだし)」


 撃沈とわかっている彼の手に、真っ赤な薔薇の花束を握らせた。


『あ、ありがとうございますっ! 頑張ります!』

「いいえー」


 そう言ったはいいけど。……えっと。ガチで誘うの? やめた方がいいと思うんだけどなー……。
 会場は、何が起こったのかわからないままパラパラ……と拍手をしていた。その微妙な拍手を背に、オレはステージを降りていった。


「(ハナは……瓦割りか。え? あれ何枚あるの? いち、に、さん……)」


 オレの次のハナが、明らかにハナよりもだいぶ高い瓦をどうやって割るのか、目が釘付けになった。


「手品、お見事でした」

「え」


 そう言ってオレに話しかけてきたのは、ハナとペアのあの男。自分から行かなくても、向こうから接触してくるなんて。


「(やっぱり、オレの存在が向こうにはバレてるってこと……?)」

「是非よろしければ、今度教えていただけませんか?」

「……気が向いたら」


 でもやっぱり、こいつも悪い感じはしないんだよな。
 そうこうしてたら、ハナが今まさに瓦を割ろうとしていた。


「すごいですよね、彼女」

「……そうですね」


 そんなの、昔っから知って――。


「ほんと、昔からすごいなって思ってたんです」

「――!!」


 そう言うってことは、やっぱり。