すべてはあの花のために❽


 で、控え室に帰ってきて、みんなして言い過ぎたかもって後悔した。帰ってきたら、例の王子が質問攻めに遭っていた。主にはハナのことだったけど。


「……とってもかわいらしかったですよ?」


 ハナのことをよく知らない奴は、きっと美人だとか清楚だとか。大人っぽいとか。そんなことを思ってる奴がいたけど、そいつはハッキリそう言った。
 ……そんなの、最初っから思ってるし。言われなくたってわかってるし。

 あいつが一人になったら軽く接触をしようと思ったけど、あの一発で人気者になったのか、常にあいつのまわりに人がいて、話しかけようにもかけられない。しかもオレのまわりには、情けない一個上の奴らが、ハナのあんな反応がショックだったのか落ち込んでた。


「(……ほんと、困った先輩たちなんだけど)」


 ま、そんなオレもちょっと落ち込んでたりするけどね。
 助けるどころか、……何。いい雰囲気って。意味わかんないし。

 それから特技に移った。オレの特技って言っても、大抵のことはできるしな……。
 アキくんは、……完全にパティシエになりきっていた。ツバサは……ああそうだね。剣道だったらあいつもグッとくるかもねー。カナはマイク一本で甘い歌声を披露してたけど、男たちからしてみたら本気でウザい奴。キサはお得意のネイルで勝負してた。そうだね。それ以外はぶきっちょだもんね。


「(さてさて。オレはどうするか……)」


 できることがありすぎて、逆に困るよね。


『それでは、次はエントリーNo.14の方! どうぞ、ステージにお越しくださーい』


 そう声が掛かる。みんなは一言オレに声を掛けて、次のドレスコードの準備に行った。


『14番の方は、どんな特技をお持ちなんでしょう』

「特技って言えるものは特にないんですけど……」


 オレは、さっとスマホを取り出す。


『ん? ……スマートフォンですか?』

「はい。実は情報集めが得意で、全生徒の個人情報がこのスマホの中にあります」


 そう言ったら、会場が響めいた。
 そんなわけないじゃん。ま、関係者のはあるけど。


『そ、それは……』

「冗談ですから真に受けないでください」

『いやいや、普段の君からそんな冗談なんて出るとは思いませんから~……』

「特技というか、趣味で写真を撮るのが好きなんですけど……」


 スマホを触って、一つ選んで見せてあげる。


『おー! これはかわいらしい!』

「どうも」


 この間近所の子犬がオレの足に纏わり付いてきて、ついでに撮った写真。フォーカスをその犬の鼻のてっぺんに合わせてドアップで撮ったものだ。会場の女子たちの反応も上々。まあ小動物好きなハナがこれを見て食いついてくれたら……なんてことは全然思ってないから。これマジだから。


「まあこれだけだと面白くないんで」


 ポケットからハンカチを取り出して、ふっと軽く振った。そうしたら、ハンカチがステッキに早変わり。


「ちょっとばかし手品でもします?」

『おおー! はいっ! よろしくお願いします!』