「どうしたのよ。えらく楽しそうだったじゃない」
「珍しいな日向」
「失礼な。オレだって笑えるし」
ていうかハナ、なんで拝んでんだろ。そんなに珍しいかな、笑うの。
ハナの出番になった時、最高の笑顔の爆弾をステージ裏に落としていたので、残ったみんなは撃沈。
「ところで日向、さっき紀紗にはなんて言われたんだ」
「そうよ。アンタのあんな笑顔が拝めるなんて、絶滅危惧種並みに貴重なことなんだから」
「それはオレとキサの内緒話だから言わなーい」
流石にこれは言いたくない。しかも何、絶滅危惧種って。本当失礼な兄貴だ。……でも。
「む。気になる」
「アンタがそこまで笑えるのを、何で紀紗は知ってるのよ」
なんだか二人がすごい気になってるから、ちょっと面白かったりした。
「そんなの知らないし。まあキサは、出番が少ない割に頑張ってるってとこじゃない?」
いやーほんと、流石はアカリさんの娘と言うべきか。ていうか、全部ハルナがオレの知らないところでチクってたのが原因だけど……え。キサ以外にチクってないよね、ハルナ……。
「(それにしても、次の奴って確か……)」
「ん? どうしたんだ日向」
「何かあるの?」
ハナのペアの相手を、チラシを見てもう一度確認する。
「(……かわいそうな人だ。絶対……)」
きっと人数合わせで無理矢理入れられたんだろう。そんな人が写っていたんだけど……。
「(こいつ、どっかで見たことある気がするんだけど。……何でだっけ)」
こんな人知り合いにもいないし、学校でも見たことはない。まあどこかで見かけたんだろうかと思っていたら、会場から割れんばかりの黄色い歓声が飛び交った。いや、奇声に近いけど。
「(……何があったの?)」
確かにハナは、いつもの制服もかわいいけど、今日はそれ以上に段違いでかわいいから女子が叫びたくなるのもわからないでもない。
「(……違う)」
その原因がわかった。ハナの相手を見て、女子と少数の男子たちが騒ぎ出したんだ。
「……誰だあれ」
「別人じゃないのよ……」
オレの脇にいる二人は、王子と呼ばれた男を見てそんなことを言っていたけれど。
「(あいつ……)」
どこかで見たことがある? そんなの当たり前だ。
だってオレは毎日のように、このスマホの写真を見ていたんだから。
「(……道明寺の、本当の子ども……)」
名前はわからない。ただこの瞬間に、やっぱりこのコンテストは初めから仕組まれたものだったことがわかった。
「(……っ。何が、守ってやるだ!)」
もう遅い。でも、今からなら間に合うかもしれない。
そう思ったら、体が動いていた。もうオレ自身が、ハナを守ろうと思ったんだ。
「(……は?)」
そしてステージに上がりかけそうになったところで見えたのは、なんでか知らないけど、真っ赤になった男の顔だった。
「(いや、わかるよ。そうなる気持ちも。現にオレらもその犠牲者だし……)」
でも何。なんでハナも真っ赤なの? はいカッチーン。
その様子に、オレの横にアキくんもツバサも、何でか知らないけどカナも来て苛々していた。
「ねえ。なんでアオイちゃんあんなに顔真っ赤なの」
「なんで葵は手を繋いでるんだ」
「なんで帽子とスヌード換えっこしてるのよ……」
「……何嬉しそうに額合わせてんだよ」
「「「え。日向(ヒナくん)??」」」
めっちゃ苛々した。何してんのハナの奴。危ないってことわかってんの? わかってんのに何してんだよ。
帰ってきたハナに、みんなも流石に嫉妬が爆発。言いたいことだけ言ってさっさと控え室に帰った。



