すべてはあの花のために❽


 早くステージから降りようと、キサの手を引っ掴み歩く。


「さてさてー。そんな弟に、どうやってアドバイスをしようかねー」

「は? オレは、別に今のままでいいって……」

「本当にいいの? ちょっと前に比べたら、気持ちは抑えてないのかもしれないけど……」

「オレは……」

「……じゃあ、まずは今日の後夜祭だね! どうやってあっちゃんを誘うか考えよー!」

「絶対に嫌だ。なんで踊らないといけないの。公開処刑じゃん」

「まああっちゃんは、昨日の時点でチカと茜と桜李と約束をしたようなものだからね。日向! ヤバいよ! ピンチだよ!」

「いや、何一人で盛り上がってんの……」

「どうやったらいいかな。あっちゃんをどうやって釣るか……」

「魚かっ」

「仮面だけだったら、流石にあっちゃんにはバレるかもね。ただでさえそのバカっぽい頭の色だし……」

「ディスられたし」

「よし! じゃあ、日向も大変身といこう! うん! そうしよう!」

「一人で決めちゃってるし」

「じゃあさ、ここはやっぱり王子様になろうよ! あっちゃんをエスコートしちゃおう!」

「うわ。オレだってバレた瞬間完全に笑いものじゃん」

「じゃあ、大泥棒にでもなっちゃう? あっちゃんを華麗にさらっちゃう??」

「キャラじゃない」

「それじゃあここはいっちょフルフェイスにして、ドレスでも着てみる? 絶対にわかんないよ!」

「それこそバレたら気まずい…………てか、もうなんかわけわかんなくなってきたんだけど」


 もうバレてるんならしょうがないけど、キサが出す案がおかしすぎて、笑いながらステージに帰ってきた。


「……いい? 次一緒に歩く時しか二人になれる時ないんだからね! ちゃんとどうするか決めとくんだぞ!」

「え。マジなの。ねえ」

「あったりまえじゃい! ほんと、こんな面倒くさい弟持って陽菜もよくやったもんだ!」

「やっぱりディスられてる……」

「でも日向もさ、たとえ自分とわかってもらえなくても、あっちゃんと話したいでしょう?」

「……いや、わかってもらった方が嬉しいんだけど」

「まあそうだけど。でも、バッチリ顔に出てたよ」

「は? 何が?」

「たとえ、本当の恋人同士じゃなくても。仮のものだったとしても。ほんの一時だったとしても。……あっちゃんと腕組んだり、手繋いで歩きたかったって」

「……そんなこと」

「いやバレてるから。少なくとも、隣にいたあたしにはバッチリ伝わってきたから」

「なんで、あいつにはわかんないのかな……」

「もしかしてステージに上がってくる前の話?」

「……ま、そんなとこ」


 ちょっと拗ねると、キサが嬉しそうに笑った。


「だったらやっぱり後夜祭、頑張っちゃおうよ」

「勝手に決めないでよ」

「楽しみだね! 自分で考えないと、あたしが勝手に面白い具合に日向を変身させちゃうからね! それじゃああとでね~」

「は? ちょっと! ……ったく。困った姉なんだけど」


 でも、自分の気持ちを丸っと全部わかってもらってる人がいるだけで、なんだか心細くなくなった。