すべてはあの花のために❽


 アキくん、そしてツバサと出ていった。次は、オレの番。


『続きまして、エントリーNo.14の方、どうぞ~』

「はあ。行ってくる」

「行ってらっしゃいヒナタくん! キサちゃんがかわいいからって、惚れちゃダメだぞ?」


 そんなことあるわけないじゃん。今でさえ、ハナの恰好見て惚れ直してるのに。


「ん? どうしたの?」


 アキくんみたいには言えない。言えるわけない。たとえオレが、捻くれてなかったとしても。
 ……やっぱりここは、オレのスタンスで。


「じゃああんただったらいいわけ?」


 にやりと笑う。まあちょっと、ハナの反応が楽しみだったり……。


「いやいや、そういう意味で言ったわけじゃないから! 彼氏がいるからねって話だよ!」


 したんだけど、全然違う意味で捉えられたし。
 ハッキリわかった。ハナはオレのこと、全然そんな風に見てないんだって。ええ。ハッキリわかりましたとも。


「ま、お断りですけど」


 ハナにそんなこと言われなくても、キサなんかお断りだし。
 わかってくれないハナに、眼中にないオレにため息をついて、ステージの上に上がった。


「(……ああ。まあキサって感じ。別に惚れたりしない)」


 向こうのステージ裏から出てきたキサは、楽しそうに笑ってた。そんなキサの生足を、実況者はガン見してたけど。……取り敢えず、課題が増えないことを祈るよ。うん。


「(どうせなら、こんな時ぐらいはハナの隣歩きたかったんだけど)」


 たとえ仮物のペアだとしても、それだけでオレは嬉しいんだ。


「(でも、眼中にないのにオレだけ喜んでたらそれこそ虚しいか。うん、キサでよかったことにしよう)」


 こんなコンテスト、ハナを守るために仕方なく出たようなものだし。そんなやる気の無さが出ていたのか、キサがオレの腕を引っ張って歩き出す。


「ちょっとー。ちゃんとやってよねー」

「……だって、どうでもいいし」


 本当にそうだ。オレがコンテストに出るハメになったのはこいつのせいだし、オレは優勝なんて狙ってなんか……。


「どうせならあっちゃんと一緒に出たかった? ゴメンネーあたしで?」

「……別に。取り敢えずあんまり引っ付いてこられたら、オレにも課題増やされそうだから離れてくんない?」

「大丈夫大丈夫。菊ちゃんみんなにはそんなこと思わないから」


 ということは、やっぱりさっきの彼が心配だ。もしかしたら課題増やされるどころではなく、下手したらSクラスから下ろされてしまうかもしれない。


「どうしてそんなに拗ねてるの?」

「……拗ねてないし」

「嘘ばっかりー。向こうでなんかあったんでしょ? 言ってみなよ?」

「……別に、何もないし」


 にこにことキサは笑い、時々会場の参加者にも手を振りながらそんなことを聞いてくる。


「日向がさ、あたしたち以外に興味があるのって、なかなかないよね」

「は……いきなり何」

「みんなはさ、そこそこ他の人たちとも話したり、仲良くしたりするじゃない?」

「オウリはしてないけど」

「それはちょっと特殊じゃん」

「……オレ、普通にクラスの奴と話したりするけど」

「あたしが言ってるのは、そういうことじゃないよ」

「……ハッキリ言ってよ。意味わかんないんだけど」


 そう言った時、ちょうど真ん中に来た。キサがそっとオレから腕を離して小さく笑う。


「だったら言うね? 日向、あっちゃんが好きで好きでしょうがないでしょう?」