すべてはあの花のために❽


 ゆっくり顔を上げると、嬉しそうに笑ってるハルナの顔があった。


「あのね? あたし、ひながだれかのために、何かしたいなんて思ってるの、知らなかったんだ」

「言ってないしね」

「そんなこと、ひなが思ってくれたことが、……嬉しい」

「はるな……」

「なんの関心も持たなかったひなが、カメラに興味を思ってくれて、嬉しかった」

「…………」

「あたしの言葉で、ひながみんなのことをちゃんと見てあげられるようになったのが、嬉しかった」

「…………」

「誰に何も言われてもないのに、ただ知らない子のために、どうにかしてあげたいなんて思ってる弟を持てて。…………すっごく嬉しい!」

「うわ、ちょっ……!?」


 いきなり飛び込んでこられて、後頭部を強打。……痛い。


「いったー……」

「おう、ごめんごめん」


 頭を撫でてくれてるけど、その手も止めてもらっていいですかね? そっとしておいてもらいたいんですけど。


「ひなは、ひねくれてるから、その子の話が聞けないと思ってるの?」

「……聞いたって、なにもできないし」

「だったら、なにもしなくていいんじゃない?」

「え。……な、なにもしないの? 泣いてるの止められないよ、それじゃ……」

「でも、だれかに聞いてもらったら泣き止むかも!」

「誰もいないところで泣いてるのに?」

「あ。そうなんだ。……うーん。だったら、聞かないであげよう!」

「意味わかんない」

「……ただね? 一人って心細いと思うよ? ひなもそうじゃない?」

「おれは、……別にそうは思わない」


 だっていっつもみんなとは遊ばずに観察したり、カメラ持って走ってる。


「……でもさ、みんなと遊ぶ時絶対行くでしょ?」

「おもしろいしね」

「でもひとりだとさみしいでしょ? そんなところにいたら」

「カメラがある」

「じゃあなかったら?」

「……はるながいる」

「もしあたしもいなかったら? ずっと一緒だから。……考えたことない?」

「……あんまり……」


 そう言うと、ハルナがまた手を握ってくる。


「だれかがいると、あったかいよね」

「……うん。そうだね」

「きっとさ? その子も、一人で泣いてるけど一人はいやな気がするよ?」

「……そう、かな」

「聞いてあげなくてもいい。ただ、その子のそばにいてあげればいいんじゃないかな」

「ほんとに……? それだけでいいの……?」

「うん。あとはー、声にするとスッキリするって言ってたよ! テレビで!」

「え。……聞かないのに、声に出させるの?」

「ひなは聞かなかったらいいんだよ!」

「どうやってだよ……」

「……耳塞げば?」

「いや、聞こえるでしょ」

「だったらこっそり聞いちゃおう!」

「こっそりじゃなくてがっつりだけどね」

「スッキリするまで言わせてあげるといいよ。そしたらきっと涙も止まる~」

「ほんとかなー……」

「え? 知らな~い」

「(さすが姉。てきとーすぎる)」