すべてはあの花のために❽


「はーい。じゃあ最後ね」

『え? 他になんかあったっけ?』

「カナと抱き合ってた」

『……!!』

「あれはどういうこと? そういう雰囲気じゃないっていうのはわかったけど……」

『……あ、れは……。……っ』

「アオイ?」

『……電話。終わったらメールする』

「は?」

『メールがね、来たんだ』

「……なんて」

『……あとで。見て』

「言えないの?」

『……口に、出したくない』

「そっか。わかった」

『……よろしくね、葵のこと』

「アオイ……?」

『今日は、もう寝るね。切ったらメールちゃんと送るから。……おやすみ』

「え? ちょ。アオイ?」


 初めて、言えなかった。……おやすみって。


「……一体どうし――」


 その疑問を口に出し切る前に、アオイからメールが入ってくる。


「…………そういうこと」


《マタ明日ネ?》


「……守ってやろうじゃん」


 今日はきっと、向こうからの挨拶だったんだ。


「……本番は、明日ってことね」


 ――明日。何かしらハナを狙って仕掛けてくる。


「明日は絶対、ハナを一人にしちゃダメだ」


 必ず誰かをつけておかないと。でも、それもだけど。


「ハナの口から。ね……」


 自分に、できるだろうか。いや、できないだろう。今の自分になんか、ハナが話してくれるわけがない。


「オレじゃなかったら……」


 ふと昔、ハナからもらった絵本が目に入る。


「オレじゃあ。なかったら、か……」


 夜中で申し訳なかったけど、ある場所にメールを一通送った。


「ま、駒だからねー。使われてなんぼでしょ」


 ニコリと笑ったあと、引き出しから透明なケースに入れられた花を取り出す。
 それをそっと、鞄に入れた。


「……オレじゃなかったら、きっとできる」


 ――だって、過去にはできていたんだから。


「さてさて。あとは、このアドレスが一体誰なのか、調べてみればいいかなー?」


 スマホの中を検索してみたけど、残念ながら見当たらなかった。


「……ちょっと小さいけど、光が見えてきたかな」


 スマホの中にいる、衣装のままで撮ったみんなを見た。


「やっぱり、姫の横には王子がいないとダメだ」


 ぼそりとそう呟いて、少しの間だけ眠ることにした。