すべてはあの花のために❽


『あと、勝手に体も動くかもね』

『な、なんで?』

『ん? 勘!』

『(さすが……)』

『やっぱり何となくわかっちゃうんだよ、ひなのこと』


 昔、ハルナがそう言っていたのとアオイの言葉が重なる。


『……あの子はひなのこと、男の子って知ったらもう会いに来ないような子?』

『……。わかん。ない』

『……ひなの話を聞いてたら、ぜったいにそんなことない子だなって思うよ』

『……。そんなのっ。わかんない、じゃん』

『そうだね! 勘だしね!』


 ハルナの勘は、よく当たる。それにハナの……アオイの勘もよく当たる。


『ま、それはヒナタにお任せするとして』

「(丸投げされたし)」

『もう一つね。ミスコン』

「……! そうだ。すっかり忘れてた」

『猫男に、そのヒントをもらう代わりに出場しろって言われたんだ』

「何故……」

『何を考えてるかはわからない。でも、何をされるかわからないから、葵は出ることにしたんだ』

「……はあ」

『ヒナタも出るんだってねー! 楽しみー!』

「こっちは全然楽しみじゃないし」

『でも安心だよ。ありがと』

「……いいえ」

『でも多分、オカマを隠したのは、猫男と似非王子に違いないと思うよ』

「……え、えせ……?」

『そう。銀髪監視野郎』

「……どうやら、それが違うみたいなんだ」

『え? どういうこと?』

「レンは今日、ずっと茶室から出てない」

『え……!?』

「補助の奴から聞いたんだけど、一日中そこにつきっきりだったらしい」

『……じゃあ、一体誰が』

「え? そのカオルって奴じゃないの?」

『……オカマに残ってるギリギリの記憶に、二人の仮面をつけた男が残っていたんだ』

「え。それって……」

『それ以降の記憶はなかった。恐らくオカマを奈落まで運んだ人間は、二人いるんだ』

「!! ……一体誰が」

『わたしもわからない。あの家の関係者かもしれないけど、他に思い当たる人が』

「……ツバサの記憶、なんとかなんないの?」

『え? どういうこと?』

「その消えた記憶を、思い出せないのかってこと」

『あるっちゃあるけど……』

「じゃあ、それをツバサにしよう」

『その記憶を消される前にされたこと、したこととか。何かがきっかけにならないと、思い出せないようになってるんだ』

「……なんでそんな面倒くさいことになってんの」

『だって、そんな簡単に記憶戻ったら困るでしょう? 記憶を消す時には、大抵本人が目の前にいるから、その時にトリガーとなった何かをその人がしない限り、忘れた人は思い出すことなんてできないんだ』

「……じゃあ、アオイでもできないの?」

『そう、だね。こればっかりは……』

「そう……」


 聞きたくても、ツバサ自体も覚えてなかったんだ。きっとハナから少しは聞いたんだろうけど、それをあいつは隠してる。


「アオイ。ツバサを見つけた時、ハナはなんて言ってたの?」

『ん? 特には。オカマも、葵に無理には聞いてこなかったんだ』

「え? 聞いてこなかったの?」

『どうしてここにいるのかとかは聞いてきたけどね? オカマは、言えないことなら気持ちだけでも吐いてくれって言ってた』

「……ふーん」


 やっぱり、ツバサは何か知ってるんだ。ハナのこと。


「(でも、理事長は特にあれから何も言ってこないし……)」


 でもハナのことを知ろうとしてるなら、オレ的には万々歳だけど。