夜。いつもと同じ時間に電話が掛かってくる。
「はい。もしもし」
『ど、どうもー……』
オレの苛々が伝わったのか、若干アオイの声が大人しい。
「説明を求めます」
『で、ですよね~……』
「だってハナ、何も聞いてくんなオーラめっちゃ出してたんだけど。意味わかんない。あいつ、まだみんなが心配してるってわかってないわけ?」
『……ちゃんと、わかってるからなんだ』
「どういうこと」
『あいつが来た』
「日下部カオル?」
『そう。それで、誰かを消したって言われて、大慌てで捜しに行ったんだ』
「………………」
『狙いやすいのは、みんなの中なら間違いなく女王様だ。だから最後のポイントに行った』
「ま、確かにね」
『でも、女王様が消えたわけじゃなくて、本当に消されていたのはオカマだった』
「え?」
『ヒナタも知らなかった? 女王様は、アキラに交代をお願いしてたんだ』
「……その相手がツバサだったってこと?」
『替わったのは初めの方だって聞いたから、葵も消されたのはオカマしかいないって、大急ぎで頭を回転させてわかった』
「それって……」
『先に最後まで言う。猫男の『ちょっと消えてもらった』ってヒントから、葵は講堂の奈落へ大急ぎで駆けて行った。……そこにいたのは、『記憶がすっかり抜け落ちた』熟睡中のオカマ』
「え。……ちょっと」
『薬の方じゃないよ。わたしが開発した『ぐっすり眠ってすっかり忘れるンデスくん』が使われてしまった』
「……そのまんまだね」
『葵はまだ、ハッキリとはわかっていないよ。……ただ、勘付いてはいると思う』
「……だろうね」
『だから葵は、こればっかりは危険だと思って巻き込みたくなかったんだ』
「言いたいことはわかるけど、オレらだって……」
『どうか、葵の気持ちもわかって欲しい。こんな家でこんなことをしているってバレたら怖いって言うのもあるけど、でもそれよりも本当に危ないんだ。みんなを守るために、葵は無理をして大事になる前に捜した。自分なんかよりも、大切なみんなを』
「……でも、オレらの気持ちもわかって欲しい。ハナが危険な目に遭ってるっていうのに、何もわからない何もできない。オレらがどれだけ不安か、アオイにもわかるでしょ?」
『ヒナタ……』
「オレだって動きたかった。でもできなかった。……っ、悔しいんだ。またハナが一人で、なんとかしようとするのが」
『……ヒナタ。それは、わたしに言うべきじゃないでしょう?』
「わかってる」
『葵を変えない限り、葵はずっと一人で何とかしようとするよ』
「……っ」
『わたしからじゃなくて、ちゃんと葵の口から葵の気持ちを。葵が今どんなことを考えてるのか。聞かないとダメだよ』
「……いじわる」
『でも、たとえヒナタが葵の名前を呼んだとしても……っ』
「……何? アオイ?」
『……ヒナタ。どうか葵の言葉で、葵の思いを聞いてあげて欲しいんだ』
「……オレになんかに、話してくれないよ」
『そんなこと言ってたら、葵のこと助けてなんかあげられないよ』
「それはダメだ」
『うん。だから諦めないで、ヒナタ』
「それなりに努力はしようと思うけど、ハナの頑固さどうにかなんないの……?」
『それはわたしも常々思います』
「ですよね……」
『まあヒナタならできるよ!』
「何を根拠に……」
『勘! わたしのは当たるよ~?』
「勘……」



