すべてはあの花のために❽


「そろそろ九条も時間じゃないのか」


 オウリはどうやらハナの監視が終わったあとプラプラするみたいで、今チカが交代でハナの監視に、オレはレンの補助をしていた。


「あ。そっか。もうそんな時間か」


 本当はわかってた。でもこいつが何かするんじゃないかって、ギリギリまで監視したかった。
 けどオレが早く行かないとアキくんが困るし、もしかしたら甘いものという餌を与えられているかもしれないし……。


「それじゃあレン、頑張ってね」

「ああ。九条もな」


「レンをよろしく」と補助の奴に伝え、オレは茶室を出て行った。……だからその時、レンがどんな表情をしてたかなんて、知る由もなかった。

 交代するアキくんのところに行ったら、ちゃんと仕事はしてたけれど、なんかパン屑をそこら辺に撒いてた。衣装でパンを持っていたのはわかるけど……普通に考えてダメでしょ撒いたら。誰が掃除するの。わかってんの? あなたそれでも生徒会長でしょうよ。

 まあハナがアキくんの糖尿病予防として、【エサをあげないでください貼り紙】を背中に貼ってたから、餌は誰も与えなかったらしいけど。


「うれしい……」

「え」


 自分のために貼ってくれた貼り紙を見て、アキくんはハナにお礼を言いに行くと、ダッシュで生徒会室へと向かってしまった。


「……どうしよう。絶対余計なこと言った」


 チカの次はアキくんがハナの監視だ。なんとしてでもアキくんと二人っきりにさせないように、チカに延長で監視してもらっておこう。


「(カナはさっき女子にめっちゃ囲まれてたから、チカが交代しなくても喜んでそこにいてくれそうだし……)」


 そう思ってチカに無線で連絡をしたんだけど、すぐに遠くの方でアキくんの声が聞こえた。末恐ろしいんだけど。


「……え。ちょっとどういうこと」


 チカが目を離した隙に、ハナが生徒会室からいなくなってたらしい。
 チカには取り敢えず、カナに連絡したあとあいつを捜すように言ったけど……。


「(……っ、出ない)」


 ハナの無線に連絡を、何度入れても出てくれない。


「(……くっそ)」


 どんっと教室の壁を足で蹴る。
 ……無理だ。平静でなんかいられるかっ。


「(絶対、なんかあるってわかってたのに……っ)」


 それを防げなかった自分に、とことん腹が立てしょうがない。かと言って今している仕事を放り投げるわけにもいかず、焦りを押し殺して……と言っても、完全にお客さんにも素っ気ない態度を取ってしまった。しょうがないでしょ。心配なんだから。

 しばらくしたらチカから、ハナが見つかったと連絡が入ったけど……。


「(……なんでツバサ?)」


 担当時間が終わってツバサにいろいろ聞いてみたけど、はぐらかされてしまった。


「(ツバサ、もしかしてなんか知ってる……?)」


 今回のことはもちろん知っているだろうが、オレが言いたいのはハナのことだ。


「(わかんないけど、取り敢えずはアオイに聞いてみよう)」


 無事だったことが何よりだ。でも、レンの補助に付いてた奴から聞いたけど、レンは茶室から一歩も出てないらしい。


「(……だったらあいつか。カオルって奴)」


 まあ、それも踏まえて聞いてみよう。
 生徒会室に帰ってきたら、ハナとカナの姿がなかった。どうやら仮眠室にいるらしかったけど……。


「(いやいやいや。カナとベッドのある部屋で二人っきりとかダメでしょ)」


 自分のことは早速棚に上げて、何気なさを装って急いで扉を開けたら。


「(……抱き合ってるし)」


 はいカッチーン。カナぶっ飛ばす。……あ。そうだ。


「(……この写真、トーマに送ってやろ。それでカナを撃退してもらお)」


 ――パシャリ! 撮ったあとで気がついた。全然そんな雰囲気じゃなかったことに。


「(……何。何があったの)」


 しょうがないから、トーマに送るのは無しにしてやろう。これもアオイに聞く。


「(なんでいきなりミスコンに出るなんて……)」


 明日の打ち合わせ中に、いきなりそんなことを言ってきた。思い出作りとか言っていた。それも、もしかしたら本当にあるかもしれないけどさ……。
 ハナは、いきなりそんなことを言うような奴じゃない。


「なんでオレも出るハメに……」

「嬉しいでしょ! 喜べ弟よ!」


 しかもキサの粋な計らい(?)で、オレもミスターコンに出ることになってしまった。


「(まあ明日だって気が抜けないし、何かあったら助けてやれるか……)」


 取り敢えずは、今夜の電話を待つことにしよう。
 今思えば聞きたいことが山ほどあり過ぎて、今日は愚痴を聞いてあげられそうにない。