すべてはあの花のために❽


 そしたら、あっという間にオウリが来た。


「おっと。仕事中だったね」

「そうだね」


 内心、もうちょっとあのままがよかったんだけど。


「♪~♪」


 そういえばさっき、思う存分面白がられたんだった。


「(あ……)」


 そうだと思って、仕返しに「ハナからいい匂いがした」って報告してやったけど。


「(絶対オウリ今頃慌ててる。ざまあみろ)」


 でもこれで、ちゃんとハナに謝ることができた。


「(それに……)」


 ハナとの近い距離と温かい体温。それに加えて、あの甘い香り。


「(……はな)」


 あの頃は普通だった距離感。でもそれも、オレだとお互いわからなかった距離感。
 それが今、ほんの少しでもあの頃に近づけたことが、何よりも嬉しかった。

 茶室に戻ると、チカがレンと一緒に片付けをしていた。


「お。ヒナタ! おかえ、り……?」

「ん? どうしたんだ柊」


 オレの顔を見るなり、チカは口を開いたまま固まった。


「ただいまチカ。何、手伝うことある? ああ、着物汚れるから替わるよ」

「へ……?」

「珍しいな九条」

「レンも置いておいていいよ。オレがするから」

「ひ、ひなた……?」

「……なんだ九条。ちょっと気持ちが悪いぞ」

「失礼な。ああチカ? さっきはごめんね、八つ当たりして」

「え……!?」

「……どうしたんだ九条は」


 そのあとオレは、二人の片付ける道具を回収して部屋を出て行った。


「(すっげえテンション高……。超ご機嫌じゃん。絶対今、あいつとなんかあっただろ……)」


 そんなオレのことを、チカがそんな風に分析してたのは知らなかったけど。