すべてはあの花のために❽


「じゃあここで【悪戯する権利】を使う」


 そりゃ暴走するよねー。


「(……っ、はな……)」


 あったかかった。あの時、倒れた時は冷たかったから……。
 あれからハナは、女になった。オレは、男になった。


「(……。は、な……)」


 触れるだけで溢れそう。溢れ出てきそう。零れ落ちそう。
 赤い顔とか、そんな甘い声とか。……箍が外れそうになる。


「(……あ。胸大っきい……)」


 ちょっと脇道に逸れてばっかりだけど、目的はハナの言葉で話させること。


「……っ、ねえ。お願い、だから……」


 嫌いになんてならないんだから。だから話して欲しかった。だって。……好きなんだ。どうしようもないほどにっ。
 ハナに心配されそうになって、もっと攻めたけど。


「……こんなになっても、言えないのか」


 ハナがオレを信用して話してくれることはなかった。
 アオイは、ルニだったオレを信用してくれたけど……。


「(でも、それはもう。言わなくていい)」


 今のオレは、ヒナタだから。……ルニじゃない。
 だったら無理矢理聞いてやろうかと、もう完全に暴走しかけた時、ツバサに邪魔された。いやまあ、助かったんだけど、もうちょっとはやりたかったりもする。しょうがないよねー。


「……はあ。やっと捕まえましたよ理事長」

「やあ日向くん。ごめんね、忙しくって」


 あれから数日後、やっと理事長を捕まえることに成功した。


「――……ということなんです。もしかしたらオレは、向こうにバレてるかもしれない」

「うーん。そうか……」


 カオルの写真を見て、理事長は悩んでいる。


「だから、オレが動けなくなったらいけないから、みんなにもこちら側についてもらった方がいいと思うんです」

「……日向くんが言っていることはよくわかる」


 そう言って理事長は席を立ち、例の隠し扉を開いた。どうしたのだろうかと思ったら、金庫の中から木箱を二つ出してきた。


「……? どうしたんですか? これ」


 一つは、偽物の花の彫刻が施された華やかな木箱。
 もう一つは何の装飾もない、一回り大きな、でもどこかあたたかみを感じる木箱。

 それを、首から提げている二つの鍵を使ってゆっくりと開けた。


「………………」


 中には、とても綺麗な花が、ひとつひとつ部屋に入れられていた。
 ……そういえば、頼んだ花がこの間届いたんだっけ。ちらり、そんなことが頭を過ぎる。


「『奇跡』を起こすか、それとも『不可能』なのか」

「え?」


 そう言いながら理事長は、小さい木箱の真ん中にある青い薔薇に触れる。
 その小さい木箱は、二部屋だけ開いていた。


「……今スタートラインに立てたのは、紀紗ちゃんと菊、杜真くん、秋蘭くん、信人くんなんだ」


 そう言いながら理事長は、大きな木箱に入っている花を指差す。牡丹、菊、ツツジ、蘭、百合の順番で。


「……まあぼくは、先生から話を聞いてから最初からこちらにいたけどね」


 そう言って触れるのは、真っ赤な薔薇。


「………………」


 理事長は置いておいて、そのメンバーを見たら何となく予想がつく。