すべてはあの花のために❽


『アオイちゃんにねー? 怒ってくれたお礼をしたのと、怒ってしまった理由を話したんだー』


 親睦会でハナがオレらに怒ってくれたこと。カナがハナに怒ってしまったこと。


『最初は、やっぱり話すのがしんどかったんだー。……でもね?』


 そう話すカナの顔が、すごく嬉しそうで。……ああ。これは落ちたなと思ったんだ。


『アオイちゃんが、話しやすいように声掛けてくれたんだー』


 その日の帰り。あいつらと別れてからオレとチカ、オウリとアカネに、カナが嬉しそうにそう話していたのを、今でも覚えてる。


『ほんと、驚いたんだよー。アオイちゃんは、上手に言葉を使うんだなーって。なんかすごい気持ちが楽になったんだー』


 ハナの言葉に、チカもアカネも苦しい気持ちが少し楽になって、ハナに話したみたいだし。


「(オレはハナみたいに、誰かの心を軽くする言葉なんて掛けてやれないから……)」


 オレが掛けてやれるのは精々、相手を苦しめる。泣かせる言葉しかない。


「でも、それじゃあアオイちゃんがつらいから」

「……かな?」


 キッ……! と見てくるカナの瞳は、さっきとは違い怒ってはいなくて。


「アオイちゃんは! 友達はじめてできたんだから! 言い方考えないとダメでしょヒナくん!」

「カナ……」


 決して自分のためではない。ハナが悲しんでいるのを見ていたくないからと、そう言ってくるけれど。


「ヒナくんは足りないんだよ! キツいんだよ言葉が! 俺らはわかるかもしれないから、それでいいかもしれないけど! アオイちゃんはまだ、友達になりたてほやほやなんだから!!」


 そう言ってくるカナはどこか、嫉妬の感情がちらついてて。


「ちゃんと理由を言うこと! ごめんねって謝ること! いい!?」


 ハッキリ言ってオレ、ハナのこと泣かしてるんだから、なんで妬かれてるのかとか全く以てわかんないんだけど……。


「……うん。わかった」


 ハナを泣かせたのは、間違いなくオレだから。ハナを泣かせたって知らなかったなんて、理由にならない。


「ちゃんと理由言う。謝るよ、ごめんって」


 泣かせたんなら、なかなかオレの話聞いてくれないかもしれないけど。……でも、悪いのはオレだから。
 汚れたオレを隠そうとして。ハナに嫌われたくなくて。オレ自身を守るために突き放した言葉が、ハナを傷つけてしまったのなら……。


「ありがとうカナ。教えてくれて」

「……ふん」


 ハナに、ちゃんと謝ろう。自分を守ったせいで、傷つけたって。


「カナが、あいつのことを好きなんだっていうのも、ついでに伝えておくよ」

「ヒナくん!? それは言わなくていいやつ……!」

「え? なんで? オレが言ったら、カナの株が上がるかもよ?」

「そ、そういうことは。俺がアオイちゃんに直接言いたいわけで……」

「……言えるの」

「……ひな、くん?」


 オレはただ、何も言わずにカナを見続けた。
 そうしたら、カナの目が徐々に見開いていく。


「……な、んで……」

「顔に出てるよ」

「……っ」

「……守りなよ」

「え……?」

「あいつが大事なら、……ちゃんと守れって言ってんの」


 オレは、あいつのそばにはいられない。それに今回は、本当に手が出せない。


「(しかも今回は、みんなが怖がってる。先生のことがあったからだ……)」


 だから、動けるのは。ハナを守ってやれるのは、カナしかいないんだ。


「……俺は、俺のやり方で守るから」


 もうこの話はしたくないのか、カナは部屋に戻っていった。


「俺のやり方、ね……」


 オレだってやってやる。オレのやり方で。ハナを必ず、すくってみせる。

 ――守ってみせる。