すべてはあの花のために❽


 オレがそう言うと、ハルナはう~んと一緒に考えてくれる。


「……いっつも、泣いてるんだ」

「ひな……」

「苦しそうなんだ。……いっつも、泣いてる」

「……ひなはさ、その子をどうしてあげたい?」


 こつんと、おでこを当ててくる。
 ああ、やっぱりハルナは姉なんだなって思った。オレは、弟なんだなって。


「……はるなはさ、いいよね」

「ん? なにが?」

「きっとはるなだったら、あの子泣き止むと思う」

「…………」

「……泣いてるの、どうしてなのかな」

「……聞きたい?」

「……うん。声、聞きたい」

「そっか。……ほかには?」

「……わらった顔、見たい」

「…………」

「あの子のこと、知りたいんだ」

「ひな……」

「ずっとぐるぐるしてる。その子のこと、なんとかできないかって」

「…………」

「たすけてあげたいんだ。ちょっとでも苦しいの。悲しいの。なくしてあげたい」

「……そっか」


 手を、ぎゅっと握ってくれる。それだけで、どこか安心する。
 オレは弟だから、こんなふうに誰かの助けなんてなってやれないから……。トーマに。ハルナに。みんなに。助けてもらってばっかりだ。


「その子に聞いてみなよ」

「……できないよ」

「どうして?」

「おれには、……なにもできないから」


 そうだ。オレには、人の涙を止めることなんて……。


「どうして? 少なくとも、その子のこと見守ってあげてるじゃん」

「え」

「ひな? 『できない』んじゃなくて、それは『やらない』んだよ。できないってきめつけちゃってるじゃん」

「……い、いや。おれは。……だって」

「うん。なんで? そう思うの?」


 今度は、ぎゅっと背中に腕を回してくれる。ああ、なんでこうも、人の体あったって安心するんだろう。


「……おれ、ひねくれてるから……」

「うん?」

「笑わせて、あげたい。……けど。ぜったいに泣かす自信がある」

「ははは……」

「だっておれ、笑うの苦手なのに。……笑ってって言われて、笑えないし」

「……そうだね」

「……はるなだったら、あの子、笑うんだろうな……」

「ひな……」

「……そうだね。おれはしないだけだ。決めつけてる。それにそんな勇気もない。ただ、……見守ってあげることしか。できないんだっ」


 ……なんだ。これ。


「…………。……っ」


 なんで。こんなに、悔しいんだ。
 こんなオレ、……知らない。