すべてはあの花のために❽


『……葵さ、ちょっと幻聴を聞くんだ』

「……は?」

『と言っても、勝手にわたしの声だと思ってるみたいなんだけど……』

「ちょ、ちょっと。どういうこと?」

『葵の中でわたし、悪い奴じゃない……?』

「本当はやさしいって知ってるよ」

『……ありがと』

「それで?」

『うん。……だからね? 無理する度に、時間が短くなるからさ。どうしてもわたしに時間を奪われる恐怖、って言うのかな。それが、幻聴として聞こえるみたいなの。ただ、『無理しすぎたら、みんなと会える時間が短くなっちゃうよ?』って。……そんな感じで言ってるだけなんだけど』

「…………」

『でも、やっぱり悪い奴だから。それが、どうしても悪く聞こえちゃうみたいで。幻聴が酷いと、倒れちゃうの』

「……打ち合わせの時も?」

『うん。実はね。打ち合わせの最中からずっと、幻聴を無視しながら説明してたんだ』

「…………っ」

『限界が来て倒れたけど。ヒナタのおかげで、みんなの前で倒れずに済んだって。日記に書いてあったよ』

「結局倒れたじゃん」

『ううん。それは葵の問題だから』

「……今度倒れる時は、倒れるって言ってから倒れてね」

『え』

「じゃないといろんなとこぶつけるじゃん」

『え』

「痛かったでしょ? この間も今日も。だからハナにも言っといてね」

『そんな無茶な……』

「……みんなに心配された?」

『……うん』

「それだけみんな、ハナのことが大切なんだよ」

『うん』

「だからさ、アオイのこともわかってもらおうよ」

『え……』

「本当はいい奴なのに、自分ばっかりつらいじゃん」

『……ううん。十分』

「え?」

『ヒナタがそう言ってくれるだけで、わたしは十分すくわれてるから』

「アオイ……」

『いつか、話す時がきたら。……その時は葵にも、きちんと話したい』

「……うん。きっと、泣いて喜ぶよ」

『ははっ。……うん。そうだと、いいな』