すべてはあの花のために❽


 少し頼りなさげに言う声に「大丈夫だよ」と声を掛けたあと、校舎裏でのことを聞いた。


「ふっざ、けんな。まじで……っ」

『ごめん。ああいうことされてる時は、わたしもちょっと出られないから……』


 叫びたかったけど、夜中だし。母さんを起こしたらヤバいし。


「もうちょっとで犯されるとこだったじゃん……!」

『うん。葵も反省してる。対処法をめっちゃ日記に書いてた』

「絶対それ。役に立たないでしょ……」

『お! よくわかったね! 十字架とニンニクをぶつけるって書いてあったよ』

「それ、違う奴の対処法……」

『……葵自身は、そいつのことを知らないんだけど』

「……日下部カオル、でしょ」

『え……?! な、なんで知ってんの……?』

「校舎の外歩いてたから、カメラで撮ってやろうと思ったんだけどさ」

『……うん』

「……そいつ、こっち向いてピースして来やがったんだ」

『え』

「しかもバッチリカメラ目線で。……あんなに人が多い中、そんなことしてくるってことはだよ」

『……ヒナタ、バレてるかもしれないね』

「だよね。やっぱり……」

『でも、何も言ってなかったよ? 『ぼくからのプレゼント』っていうのは多分、あの無くされた資料のことだ』

「……あいつがやったのか」


 ……いや、でも待て。校内は普段、桜の関係者以外立ち入り禁止なはず。


「(銀色、か……)」


 きっと、その線が有力だろう。


『ヒナタ? 聞いてる?』

「ああごめん。何?」

『どうするの? ヒナタが動けなくなったら……』

「……ちょっと、理事長と先生に相談してみるよ」

『え?』

「潜り込んでる先生なら、カオルって奴にオレのことがバレてるかどうかわかるだろうし」

『うん……』

「オレがもしダメになったら、オレ以外にもみんなにも動いてもらえばいい」

『……!! でも、みんなに葵のこと知られるのは……』

「みんなもさ、ハナやアオイのこと知るべきだ」

『……わかってる、けど……』

「まずは知ろうとすることが大切なんだ。それからみんなが動けばいい」

『…………』

「大丈夫。オレの友達だから。絶対に、ハナやアオイのために頑張ってくれる」

『……そう、だったら。いいな……』

「大丈夫。……だから、アオイも信じてて」

『……。うん。頑張る』


 さて、これからどうするか。
 本格的に動けなくなったら、それこそ本当に……ヤバい。


「(やっぱり誰かを使うか。オレは近づかない方がいいだろうな)」


 でも取り敢えずは、コズエ先生と理事長に相談だ。